熱々のうまいスープに絡む麺、柔らかなチャーシューと半熟味玉。日本人がこよなく愛する国民食のラーメンが今、大ピンチに陥っている。
東京商工リサーチが9月12日に公表した集計によると、2023年1月~8月までのラーメン店の倒産件数は28件に達し、前年の同時期と比べて3.5倍に急増しているのだ。このペースでいけば、ラーメン店の年間倒産件数は過去最多を更新する見込みだという。
今年で創業48年を迎える人気チェーン(池尻大橋店、代々木公園店、宮古島店)、『らーめん香月』の統括責任者である橋本さんは、ラーメン店を取り巻く過酷な現状をこう話す。
「原材料価格の高騰に加えて、光熱費や人件費なども値上がりしていますが、お店的に一番キツいのは材料費。とくに魚介系の高騰ぶりがすごい。
ウチのラーメンはスープの出汁に千葉や長崎で獲れる国産のニボシを使っています。2022年の夏ごろまでは1キロ650円だったニボシの仕入れ値が、23年になってから急上昇。今では1キロ2400円。およそ4倍にまで跳ね上がりました……。しかもこの価格ですら安定的な仕入れが難しくなっているラーメン屋さんもあるほど、ニボシが入手困難になっているんです」
店舗間で生じる「ニボシ戦争」。止まらぬ価格高騰に苦しんでいるという橋本さんだが、原材料価格の高騰は今後も続くと見ている。
「今のところニボシ以外の材料費は、以前の1.2~1.3倍ほどの値上がりで収まっていますが、それは業者さんに在庫のストックがあるから。今ある在庫が底をつくと、ニボシ以外の食材もさらに値上がりするのはほぼ間違いないと思います。
ラーメン業界には1000円の壁と呼ばれる強固なボーダーが存在する。そのため、値上がりした分をすぐに価格転嫁するのは難しい。資本力のある大手さんならともかく、小規模な大衆店で多数の常連さん抱えるラーメン屋さんほど、物価高騰しても値上げはできない、というジレンマに陥っているのではないでしょうか」(前同)