■『すきすきワンワン!』は優しい気持ちが溢れている

 当作品が発表になった際、突飛な設定とかわいらしいドラマのタイトルに面食らった部分が少なからずあった。しかし、ひとりの人間と犬の出会いを、優しく、温かく描いている。生きること、死ぬこと。生まれ変わったら、また出会いたいと思う愛しい気持ち。何年経っても忘れられない存在への愛する気持ちを優しく描いた、強いメッセージ性のあるドラマだといえるだろう。

 炬太郎が抱く純粋な気持ちは、大人になると忘れてしまったり、理想と現実に歯ぎしりをしながら、少しずつすり減っていくものだ。だけど、炬太郎と天のやりとりを見ていたら、「こんなことがあるかもしれない」と思えてくるのが不思議だ。どこか懐かしさを感じさせる、美しい風景と優しい音楽が、感情を揺さぶって泣けてくる。30分の枠が本当にあっという間で、深夜ドラマなのが本当にもったいないと思う。

 愛犬・てんの生まれ変わりを演じる浮所は、炬太郎に会えた喜びや感動を素直に演じていたのがとてもいい。みずみずしさが溢れる芝居で、愛嬌ある笑顔を見せられると、彼は本当に前世は犬なのではないか? とさえ思えてくる。

 それもそうだろう、天にとって、炬太郎は命の恩人ともいえる存在なのだ。冷たい場所から引きあげて、あたたかい環境、人間の温もり、幸せをたくさんくれた大切な人。だから、そばにいるだけで幸せいっぱいなのだ。夢や目標を失っている炬太郎だが、自立した天と一緒に暮らすことで、いい刺激をもらうことになるだろう。次話が楽しみだ。(文・青石 爽)