■「なぜ70年代の歌?」GP帯でのフジの狙い

「歴史上の人物が現代に転生し、“パリピ”の集うクラブや歌手を夢見る女子と二人三脚でスターへの道を目指す、という話は、本来はもっと深夜帯か配信ドラマでもいい内容。

 でもフジはあえてゴールデンプライム(GP)帯にチャレンジした。GP帯メインの視聴者層は50代や60代です。いきなり”パリピ”やクラブと言われても、ピンとこない視聴者が出てくる。

 ならば、いっそ彼らに刺さる70年代にヒットした歌謡曲を序盤にもってくれば、その世代を置いてけぼりにしていない、という視聴者へのアピールができる。しかも現在は、実際に昔の歌謡曲が“シティ・ポップ”として再ブレイクしている時代。若い世代にも”あの曲、何?”と関心を持ってもらえます」(前出の制作会社関係者)

 総務省情報通信政策研究所『令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書』(調査対象:全国の13歳~69歳男女1500人)によれば、平日22時にリアルタイムでテレビを見ているのが最も多いのは50代で30.1%。2位が60代で28.9%、3位以下40代(25.9%)、30代(19.2%)と続く。視聴者獲得のためには、50代以上が大事になってくるということが裏付けられる。

「しかも、英子(上白石)が“売れたくてもがいている”という設定である以上、物語の序盤で“何か違う”と思われるのは、ある意味正解なんです。まだ売れておらず、道を模索中なので」(前同)

 キャラクターが違っても、歌手として大きく羽ばたきたいという夢は同じ。ドラマ版はドラマ版として楽しめる作りになっているということだ。

 第2話では、孔明(向井)が英子を売り出すべくアートフェスのライブをブッキングするも、英子のステージは端のうえ、向かいは人気インディーズバンド・JET JACKET(森崎ウィン・33、高尾悠希・28、松延知明・31)という試練が待ち受ける。そのうえ機材トラブルが勃発。

 踏んだり蹴ったりな英子のステージへ、孔明はどう客を連れてきてくれるのか。そして英子は、自身のステージでどんな奮闘を見せてくれるのか。

 音楽シーンがすべて本気だからこそ、歌手の卵である上白石演じる英子の成長が際立つというもの。今後、ドラマではヒップホップやロックシーンもカギになってくることのはわかっているが、新境地を手にして一皮むけた時こそが、英子がスターダムにのし上がる兆し。そう捉えれば、今後のドラマヒットのカギを握るのは、まさに上白石の出来次第といえそうだ。(ドラマライター/海月)

※画像は水10ドラマ『パリピ孔明』公式X(旧ツイッター)『@paripikoumei_cx』より