Z総研が発表した2023年上半期「Z世代が選ぶトレンドランキング」で1位となった「蛙化現象」。

 10代、20代の若者が異性に対して幻滅した状況を指し示す際に使用する言葉だという。流行語となって広がったこの言葉。実は20年ほど前に生まれていた心理学用語だ。なぜ今になってブレイクしたのか。また、どんな人が陥りやすいのか。背景には、SNSの存在が大きいという。

 本来の「蛙化現象」は、自分が好意を持った相手に振り向いてもらえると、翻って相手に嫌悪感を抱いてしまうことだ。2004年、臨床心理学者の藤澤伸介氏がこの心理を研究・分析し、『女子が恋愛過程で遭遇する蛙化現象』という論文にまとめている。

「蛙化」の由来は、グリム童話『かえるの王さま』にある。物語のあらすじはこうだ。

 魔法でカエルの姿に変えられていた王子が王女に出会い、困っていた王女を助ける。その礼として一夜を共にする約束を取りつけたものの、いざとなると王女はカエルが嫌で壁に叩きつけてしまう。すると魔法が解け、目の前には人間に戻った王子の姿が! そこから2人は一気に仲良くなり、最終的には婚約する――。

 嫌いだったのに、急転直下好きになるという物語から着想を得て、“突然相手に対する恋愛感情を正反対に振り切ること”が「蛙化現象」と名付けられた。

 では、この言葉がなぜ最近になって若者の間で突然注目され、広まっているのか。芝浦工業大学デザイン工学部教授で、若者研究の第一人者であるマーケティングアナリスト・原田曜平氏に背景を読み解いてもらった。

 原田氏によれば、現在若者の間で広まっている「蛙化現象」という言葉は「まったく別の意味」に進化しているという。

「好きな人や彼氏に限らず、男性に感じた“ガッカリポイント”のことをなんでもかんでも“蛙化現象”と言うようになってしまっています。代表例が、女性が男性と一緒に行ったフードコートで、男性が空席を探してキョロキョロしている姿。あとは車を駐車する際バックで何回も切り替えていたり、飲食店でスムーズにお支払いできなかったりした時など、男性がものごとをスマートにできない様子を“蛙化”と指します」