前人未到となる将棋界のタイトル全八冠制覇まで、残すところ王座戦のタイトルのみとなった藤井聡太竜王(21)。そんな最中、10月6日から始まった竜王戦で挑戦者として藤井竜王に相対することとなったのは伊藤匠七段(20)だ。7日に終局を迎えた第一局は白熱した展開の中、藤井竜王が勝利を収めた。
将棋記者が解説する。
「伊藤七段と藤井竜王は同学年。5日に行なわれたタイトル戦の前夜祭では、すでに誕生日を迎えている藤井竜王が“私の方が1歳年上なんですけど”と話して会場を笑いに包む余裕も見せていました。
一方、挑戦者である伊藤七段はタイトル戦に初登場。2人揃った写真撮影でも、口を真一文字に結んでやや緊張した面持ちという印象でした」
将棋界の若きホープとして注目を集める2人。初対決は小学校3年生の時のことである。この時は伊藤七段が勝利を収め、藤井竜王は号泣したという。以来、「藤井聡太を泣かせた男」として知られてきた伊藤七段。
「今回の対局は、タイトルホルダーとして迎え撃つ藤井竜王と挑戦者である伊藤七段の年齢が合わせて“41歳”ということにも注目が集まっています」(前同)
これまでタイトル戦を戦った両対局者の年齢合計が最も若かったのは42、1990年に行なわれた第57期棋聖戦でのこと。当時18歳だった屋敷伸之棋聖との対局に挑んだのは森下卓六段、当時24歳だった。
30年以上の時を経て更新された、史上最もフレッシュな頂上対決。今回の対局を90年の棋聖戦に挑戦者の立場として登場した森下卓九段(57)はどう見るのか。
「2人は子どものころから10年以上に及ぶ因縁があるわけですから、伊藤さんから見たらようやくの対決という思いでしょう。
藤井さんは現在、七冠。10月11日に行なわれる王座戦で、永瀬拓矢王座(31)を相手に勝利を収めれば前人未到の八冠を達成します。そういう点では、伊藤さんにとって藤井さんは遥か雲の上の存在。やっと並ぶチャンスが到来したという思いでは」