「サブローーー」、「佐々木ろーきー」

 一度聞いたら忘れない、伸びのある特徴的な声。この声で選手の名前を呼び上げ、千葉ロッテマリーンズの本拠地である「ZOZOマリンスタジアム」のボルテージを最高潮にまで高め続けてきたのは、場内アナウンスを務める谷保恵美(たにほ・えみ)さんである。1990年に北海道から上京すると、昼間は仕事をするかたわら、夜は連日の球場通い。

 横浜スタジアムや東京ドームに足を運んでは日々、耳で場内アナウンスの発声方法を学んだという。そうした努力の甲斐あってか、翌91年には、千葉ロッテマリーンズの前身球団にあたる、ロッテオリオンズの本拠地があった川崎球場で球場アナウンスとしてのキャリアがスタートする。以後、33年、2100試合に渡って小宮山悟(58)、黒木知宏(49)、西岡剛(39)ら、数多くの名選手の名前を場内で叫び続けてきた。

 そんな谷保さんが、場内アナウンスのレギュラーシーズン”現役”最終戦を迎えたのは2023年10月7日の対オリックスバッファローズ戦でのことである。

 スポーツ紙記者が語る。

「ホーム最終戦は1対4でロッテの敗戦。チームは谷保さんの花道を飾れなかった。それでもスタンドには“ステキな声忘れません”と手書きされた紙を持ったファンも現れるなど、場内からは大声援が送られました」

 試合後、CS(クライマックスシリーズ)出場権を争う最中のロッテとあって、谷保さんは涙ながらに、「レギュラーシーズン最後となりました。また今シーズン中にこの球場にいらしていただけることを願っております。今までありがとうございました」とアナウンス。

※画像は『千葉ロッテマリーンズ 広報室』公式X(ツイッター)『@chibalotte_pr』より

 すると場内からは大きな拍手が送られた。その後、グラウンドで引退記念セレモニーとして花束が吉井理人監督(58)らから手渡されると、ロッテファンが陣取るライトスタンドからは“た~にほ~”の大合唱。お役御免かとも思われたが、チームは特大の引退プレゼントを谷保さんへと用意していた。