■卵も小麦粉もキャベツも「全部高騰」の悲鳴

「卵も原価が1個あたり1.3倍ほどになっている」

 と前出の小山さんは話す。これを受けて『千房』では、23年4月にメニューを再値上げ。前述のHP上で販売している『千房お好み焼き豚玉1枚入り』は626円にまで値上がりした。背景にあるのはやはり、長期に渡る原材料費の高騰だという。

「今後も仕入れ価格が下がることはほぼないという判断があり、致し方なく価格に転嫁させていただいた次第です。最近はインバウンド需要の復活もあり、店舗での売り上げはコロナ前よりも上がっているのが唯一の救いといったところでしょうか」(前同)

 原材料費高騰の影響はチェーン店に留まらない。兵庫県神戸市の和田岬に店を構えて60年ほどになる『お好み焼き 高砂』の店主・谷喜代子さんは、「お好み焼きを作るのに必要な材料は全部値上がりしてます」と嘆く。

「22年の冬に1回、23年の春にもう1回、短期間で2回立て続けに小麦が値上がりしました。値上げ前は小麦30キロが4000円~5000円の間だったけど、今は30キロ7000円もする」(前同)

 同店のメニュー表にもあるたこ焼きは更なる窮地を迎えているという。

「イカやエビよりタコの値上がりがひどいです。今年の初めまでは3匹4000円くらいだったタコが、今は3匹7000円。 さらにキャベツは1ケース6個入り1600円だったのが、2000円になりました……」(同)

 燃料費の高騰から冬に向けてハウス栽培品がメインとなるこれからの季節、キャベツは更なる値上がりが見込まれるという。物価高騰の影響を受け、谷さんも値上げを決断した。

「去年ね、お好み焼きを50円だけ値上げしました。お好みメニューで一番安い“すじ焼き”を650円から700円にした。それでもめちゃくちゃ安いでしょ(笑)。アルバイトは一人だけ雇っています。材料費もそうだけど人件費や光熱費とか、いろいろ大変だから常連さんからも“値上げしたらええやん”とは言われます。だけど高くなったら悪いなあという気持ちもあるから、今のところこれ以上の値上げは考えていません」

 B級グルメの代表格であったはずの“粉もん”。このままでは庶民の手には届かない食べ物となりかねない。