飲食店で店員と客が敬語を一切使わない“タメ口”で話すとしたら、概ね「常連」か「友達」どちらかの関係性だろう。反対に、常連でも友達でもないのに、いきなり店員がタメ口で話しかけてきたらギョッとするはず。それを逆手に取り、大きな話題となったのが、東京・表参道で2023年4月22日にオープンした「友達がやってるカフェ/バー」だ。
スタッフがまるで友達のようなタメ口で接客するというコンセプト。日本社会では敬語や丁寧語を叩き込まれるだけに、開業してからその斬新な接客スタイルは注目を集めている。SNSでも《行ってみたい!》と反響を呼んでいたが、半年経ってもその賑わいぶりは衰えない。
店はルイ・ヴィトンやMarni、Diorといった高級ブランドが立ち並ぶ表参道の大通りから1本内側に入った、路地にある雑居ビルの3階だ。階段を上りお店のガラス扉を開けると、「やっほ~!来てくれたんだ!」と女性スタッフから親しみたっぷりに手を振って迎え入れられる。そのカジュアルさは一瞬、本当に旧知の友人だったかと錯覚を起こすほどである。
店内は深緑と白をベースにした癒しの空間。フレンドリーなスタッフたちは、全員エンタメ業界で活動している俳優やクリエイターだという。
そんなスタッフが「いつもの席でいい?」と案内しながら持ってきてくれたメニュー表には、ランダムで提供される「いつも飲んでるやつ」や、「たしかラテ美味しかったよね?」(カフェラテ/780円)、「店員さんの間で一番人気なのってどれ?」(クリームソーダ/900円)など、“タメ口”のメニュー名がずらり。
ソフトドリンクとスイーツ以外にもつまみやアルコール類の提供がある。そちらも「サッと出てくるおつまみ、何かある?」(オリーブ/500円)、「この間、試作品でくれたやつ美味しかったよ」(パウンドケーキ/600円)、「何か変わったジントニック飲んでみたいんだけど」(コーヒージントニック/1400円)など、注文時に自然とタメ口になる工夫が凝らされている。