福袋といえば新年の初売りで売り出され、“何が入っているかわからないが、定価以上のものが買える”ものだった。しかし年々、前年からの「予約販売」、かつ「中身が見える(わかる)」福袋が当たり前になりつつあるのだ。

 また、近年は「モノ消費」から「コト消費」へと需要は変化。旅行やエステなどといった「体験型」の福袋も人気。そして、来年、2024年の福袋はそこに“貴重さ”が加わりそうである。

 たとえば松屋銀座では、「銀座の一流“文化”体験福袋」(3万8500円)として、銀座の老舗着物専門店による大島紬を着て“銀ぶら”を体験。年に一度しか行なわれない超貴重な、新橋演舞場で行なわれる伝統ある「東をどり」も楽しめる商品を用意している。

 高島屋では「ムービングサウナ福袋」として、220万円もする高額企画を発表した。「ムービングサウナ」は、つまりサウナを車両に乗せて運ぶことができるというもの。大自然の中はもちろん、海、川、湖、キャンプ場など、どこでも自由にサウナライフを楽しむことができるのが売り。

 車両に乗せさえすれば何度でも使うことができる。どこでも”ととのう”ことができるのが最大のポイントだ。流行りの”ととのう”経験がどこでもできる辺り、サウナ好きからしたら超が付くほどの目玉商品といったところか。

 もちろんお得度が高い従来型の福袋には変わらぬ需要があるだろうが、こうした“新・福袋”の登場について、芝浦工業大学デザイン工学部教授で、若者研究の第一人者であるマーケティングアナリスト・原田曜平氏は「格差がコンテンツ化している時代」を指摘する。

「中に何が入っているかわからない福袋が人気だった昭和の後半は、消費が快楽だった時代。“余計”なものが入っているドキドキ感が、エンターテインメントでした。しかしバブルが弾けた後の2000年代頃からは、不況とともにエコといった概念が生まれてきた。

“いらないものを持つのは無駄”という考え方が普及。必要なものだけがほしいという消費行動がメインになってきて、必要最低限の物で暮らすミニマリストや、“断捨離”本がブームになったのもこの頃です。福袋も、間違いないものを安心して買いたいという概念に変わってきたといえます」(前出の原田氏)

 インターネットが普及し、ネット通販が当たり前になると、販売側にも”予約販売”で福袋を売るメリットが出てきた。

「買う側は並ばずとも手に入る。売る側も、前年から前倒しで予約を取れば確実に売り切ることができます」(前同)

 では、福袋の高級化はどう見るか。

「生活に格差が広がっていますよね。高度成長期に謳われた一億総中流時代はとっくに終了している。日本全体が階級社会っぽくなってきました。事実SNSでは激安、貧乏といった生活がネタになる一方で、お金持ちの自慢が蔓延している。格差のコンテンツ化があります」(同)