■「準優勝するまでは、芸人としての心はとっくに折れていました」
――滝沢さんはお子さんもいて、カミさんに「月に30万円は家に入れて」と言われて、ゴミ清掃員の仕事を始めたとインタビューで明かしていますが、それをちゃんと活かして本とか講演の仕事につなげているのがすごいですよね。
西堀 嫌味な言い方だな。でも、滝沢もゴミ清掃員を始めた時に、有吉(弘行)さんに「ゴミ清掃員のつぶやき」みたいなツイッターやればって言われたのが目に留まって、本とか講演の仕事につながったんだよね。そう考えると有吉さんって、優しいな。
――同じように、有吉さんにアドバイスされたけど、西堀さんは『タカり飯』でしたからね。
西堀 だから、嫌味な言い方するなよ! でも俺も当時、ドラマの端役とかにはちょこちょこ呼んでもらえてて、「細川たかし一座」にも入れてもらえて。それで安心していたんですけど、冷静に考えたら、芸人としてはヤバかったわけですね。
それでまず、昔行った発明家のロケでもらった資料を数年ぶりに引っ張り出してきて、発明をやることにしたの。
――それが大成功。靴を洗うブラシと洗った靴を干すハンガーが一体となった『靴ブラシハンガー』で、「第24回 身近なヒント発明展」(2020年)のアイデアが初出品にして、まさかの「優良賞」に輝きましたね。さらに、『静音 くつ丸洗い洗濯ネット』(スマイルキッズ株式会社)は商品化されバカ売れ中とか。
西堀 宣伝ありがとうございます(笑)。当時は本当に暇でしたからね。じっくり発明できたと思います。
――それでも、発明がうまくいくかどうかは分からなかったわけだし、やはり、芸人として復活しなければならなかったわけですよね。
西堀 本当のことを言うと、『THE SECOND』で準優勝するまでは、芸人としての心はとっくに折れていました。もう、二度と世の中に出られないんだろうなって漠然と思っていましたから。
――それでも芸人を辞めなかった理由は?
西堀 なんというか、贅沢しなければギリギリ生きていけるだけの収入はあったんですよ。ちょいちょい土木のバイトもしていましたし。だから辞めなかったのかもしれません。和賀(勇介※ピン芸人)とかねろめ(※ピン芸人)とか、芸人としての収入では絶対生きていけないレベルだったら、芸人を辞めていたかもしれないですね。
収入だけじゃなくて、自尊心も傷つけられるんですよね。もう芸人として需要がないなら、普通の仕事に就いて生きていけばいいやって思っていましたもん。だから、実はこの本に登場する芸人の中で俺が一番、「芸人じゃなきゃ嫌だ」っていう気持ちが希薄なのかもしれませんね。
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彼らが罹った「芸人という病」――“芸人でいたい男たち”の日々は続いていく――。
芸人という病(双葉社)
西堀亮(マシンガンズ)
2023年9月21日 発売