■元連合赤軍メンバーが考える「本当の革命」

 あれから50年が経ち、信濃毎日新聞は地元紙ということもあり「あさま山荘事件 衝撃の記憶」という企画記事を連載していた。第4回がとても興味深かった。元連合赤軍のメンバーが登場していたのである。

 現在は愛知県で農業をしている加藤倫教氏は「自分たちの勝手な考えを世の中に押し付けようとしていた」と語る。事件の約2カ月前は群馬県の山中のアジトで「総括」と称した仲間へのリンチに加わった。最初の対象は兄だった。獄中では読書に浸り「革命は大多数の国民のためにやること。革命を自己目的化していた」と自分なりに事件を「総括」した。今度こそ敵味方ではなく誰にでも役に立てる活動をすると考え、出所後に農業を始めた。

《今は生まれ育った故郷を大切にすることが本当の『革命』だと思っている》

 人生の長さを感じる記事だった。

 その一方で、私は記事中の「総括」という言葉にハッとした。自己批判が足りないと断定されるや仲間からの暴力が待っていたのだ。

 映画『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(若松孝二監督)ではリーダーが総括という名の自己批判をメンバーに求めるシーンがあった。

「なぜ山へ来るのに水筒を忘れたのか!? 総括を求める」「なぜ革命のために化粧をしているのか!? 総括を求める」

 こうなると寛容やユーモアが徹底的に消えてしまう。この映画を見て感じたことは、『教養としてのプロレス』にも書いたが、あの場でオナラをしたとしても、総括を求められたに違いないと思うのだ。笑いごとにならない空間の怖さ。今回の信濃毎日新聞で元メンバーの証言を読んだらまさにそうだった。嫌とは言えない同調圧力や孤立する恐ろしさもあったのだろう。