■「Z世代」に流行する納得の理由
また、10代後半~20代前半の「Z世代」の間で流行するのにも理由がある。
「いわゆる、大人になるための準備期間ですよね。自身のアイデンティティをまだまだ確立させられない、迷える年頃です。自分の長所・短所を知る“自己認知”や、自分を客観的にみる“メタ認知”を把握するのはなかなか難しい。
さらに、今はさまざまな生き方を認める“多様化の時代”であるがゆえに、不安になる若者が多くなっている実情もあります。いろんな自由、選択があるということは、ますますアイデンティティが分かりづらくなり、迷いやすくなるということ。それは結局不安につながるんですよね。
だからこそ自分という人間が可視化され、行動指針がわかるということで『MBTI』に興味を持つ若者が多いのでしょう」(前出の木村氏)
ただし、木村氏は「“言い訳”にしてしまうリスクもある」と警鐘を鳴らす。
「たとえば診断結果により自分の苦手なことがわかったとして、それを”こういうふうに診断されたんだから自分にはできない、無理”と自身に烙印を押すのではなく、解決の道を模索する。そういう自分ともうまく付き合っていく術を考えることこそが大切です。
また、『MBTI』は相性も分かるとして人気です。仮に、周囲の人間とお互いのタイプが分かることで親近感を持つなど、前向きになれるなら良いと思います。ただ逆にいえば相性が悪いという結果が出た時に”この人と自分は合わないんだ”と錯覚し、シャッターを下ろしてしまうリスクがあります。
結果はあくまでその人が持つ傾向の可能性を示しているだけに過ぎません。ものごとの“判断軸”にし過ぎてしまうのは怖いことかなと思います」(前同)
一般社団法人日本MBTI協会も、MBTIは「回答した個人一人ひとりが、自分の心を理解し、自分をより生かすための座標軸として用いることを最大の目的」だとする。結果に縛られないように、上手に活かすことを考えたい。
木村好珠(きむら・このみ)
東邦大学医学部卒。在学中の2009年にミス日本グランプリ決定コンテストで準ミス日本受賞、2010年に日テレジェニック2010メンバーに選出。
2014年に医師免許を取得。慶応義塾大学病院にて研修後、精神神経科に進む。山形県内精神病院で勤務後、現在はこのみ こころとからだクリニック院長として勤務する傍ら、産業医、健康スポーツ医として活動。