■歴史的猛暑の終了と考察疲れも視聴率低下の原因か

【テレビ朝日系 木曜ドラマ枠(午後9時~)】

・【10月期】菅野美穂(46)主演『ゆりあ先生の赤い糸』の第4話(11月9日放送)…1.2%

・【7月期】中村倫也(36)主演『ハヤブサ消防団』の第4話(8月10日放送)…2.0%

※画像は『ゆりあ先生の赤い糸』の公式X『yuriasensei_ex』より

『ゆりあ先生の赤い糸』は、『BE・LOVE』(講談社)で連載されていた入江喜和氏の同名コミックが原作。“おっさん”主婦の伊沢ゆりあ(菅野)が介護、愛人との同居、嫁姑問題を痛快に乗り越える、今を生きる人間たちの“ひとつ屋根の下”のヒューマンドラマ。

『ハヤブサ消防団』は、『半沢直樹』などで知られるベストセラー作家・池井戸潤氏の同名小説が原作。主人公でスランプ気味の作家・三馬太郎(中村)が亡父の故郷、山間の「ハヤブサ地区」に移住して消防団に入ったことで、村を取り巻く陰謀に巻き込まれるサスペンス作品である。

「もともとテレ朝ドラマはコア視聴率が取れない流れにありましたが、『ハヤブサ消防団』は“主演が女性人気の高い中村倫也”、“『原作・池井戸潤』のブランド力”、“謎が謎を呼ぶ考察ドラマの側面もあった”という点で若い層を取り込むことに成功しました。

『ゆりあ先生』は、菅野さんが主演というのが若い世代にはなかなか響かなかったのかもしれませんね。厳しい秋ドラマのなかでも、かなり苦しい数字になっています……」

 テレビ業界では、夏ドラマは行楽シーズンや夏休みで外出する人が多いため視聴率は取れないと言われてきたが、今年はむしろ夏ドラマの方が良くて、秋ドラマが大変厳しい結果になりつつある。各ドラマの内容以外からも考えられる点としては、

「1つは今年の夏(6月~8月)は1989年以降で最も平均気温が高く、最高気温が35度以上の猛暑日が連日続く異常気象だったことが考えられます。

 日中の外出でバテてしまった人や、暑くて夜遊びする気分になれない人が、涼しい部屋で休み、テレビをつけたことで例年よりも数字が良かったと考えられる。それが、秋になって涼しくなって出かける人が増えて、テレビ離れ、秋ドラマ離れが加速してしまった――ということです。コロナ禍も落ち着き、今は夜、飲食店などにも多く人がいますからね。

 もう1つは、『ONEDAY』が代表例ですが、秋ドラマは『VIVANT』の余波を受けているところもあるかもしれません」

『VIVANT』は壮大なスケールで描かれただけでなく、サスペンス要素や考察、ハラハラドキドキな駆け引きが目白押しだった。同作が盛り上がりすぎた反動で、視聴者が2クール連続で腰を据えてドラマをじっくり見るのに疲れてしまったのかも――と、考えられるという。

「10話近くある連ドラを毎週リアルタイムで追うというのは、動画を倍速視聴することも珍しくない現代人にとっては、かなりハードルが高いことと言えるのかもしれません。

 それに、『ONE DAY』のように“『VIVANT』の方が面白かったな”とどうしても比べてしまいドラマに入り込めない人や、2クール連続での“考察”に疲れてしまった視聴者も多いでしょう。『VIVANT』が終わったとき、“考察疲れ”というワードも言われましたよね。

 事実、『VIVANT』と作風が被っておらず、安定感のある長期コンテンツの『相棒』(テレビ朝日系)は、世帯視聴率もコア視聴率も安定していますからね」

 記録的猛暑の終了と超スケールの規格外ドラマ『VIVANT』の余波。もちろん各々のドラマのクオリティも低視聴率に影響を与えているだろうが、思わぬ2つの原因が、秋ドラマの壊滅的な現状を招いてしまっているのかもしれない――。