■変わる消費行動“ついで買い”から“目的買い”へ

 自販機だからこそ広げられた購買体験とは何か。

「有人の店舗だと出店できないような未活用エリア、極小エリアなども自販機を設置することにより出店が可能になります。さらに今後、問題になる人材不足などの問題も解決できる。インターネット通販と同様に24時間店舗運営をすることができます」(前出の續氏)

 昨今の消費行動のトレンドも関係している。續氏によると、旅行や外食などコロナ禍で我慢していた消費行動が復活し、”体験”にかける消費行動が増えているという。續氏は「その流れの中で、自販機のお店も”体験”の一つ」と語る。

「今までの自販機は”喉が乾いたから、近くの自販機で飲み物を買う”という“ついで買い”のような偶然的なものでした。『KAKUDAI BASE』の購入は”目的買い”です。あそこで買う、自販機だから買えるなど、今までの活用方法とは大きく違う”購入体験価値”を提供しています」(前同)

『KAKUDAI BASE』は、消費者だけでなく商品を出品するメーカー側にとってもメリットがあるようだ。1号店がある明大前駅は、2022年度の1日の駅乗降数は3万7476人。利用者が多い駅とあり、出品メーカーの商品が多くの人の目に留まりやすい。

「多くの人が毎日当たり前に通る場所で商品を販売することで、”出会い、認知拡大、購買体験、商品体験”とお客様との接点や出会いを提供することが可能になります。『KAKUDAI BASE』で買った商品を気に入ったら次回はインターネット通販で購入するという、新しいお客様との接点を作れる場所にもなります」(同)

『KAKUDAIBASE』がある明大前ホーム

 今後の展開について、續氏は「自販機を活用した無人店舗というコンテンツは、アパレル・雑貨など多くの小売メーカー様の直営の販売チャネルの一つとなって活用できる可能性があると思っています」と意気込む。

 世界から訪れた観光客が、街中での設置台数の多さと買える物の豊富さで驚くというニッポンの自販機。今後は、消費者とメーカーをつなぐ出会いの場として期待されるようだ。次なるヒット商品はここから生まれるのかもしれない。

株式会社ダイレクト・ホールディングス
無人の自動販売機 “店舗” の出店コンサルと人による運用支援サービスを展開する企業。本社は東京都新宿区にある。