■日曜劇場でおなじみの「一難」が機能しないワケ

 南雲の教員免許偽造問題が解決したところでの、犬塚(小日向)の失明の恐れがある眼の病気という、新たな問題発覚。一難去ってまた一難は、「日曜劇場」おなじみのパターンで、ひとつずつ問題をクリアすることで、盛り上がりを高めていく仕掛けだ。

 ただ、『下剋上球児』はその一難が、本来の主人公である球児たちと関係ないところで起きている。うまく機能すれば物語を盛り上げるスパイスになるのだが、球児たちの頑張りとは関係ないところで起きて解決するため、単なるノイズになってしまっているのだ。

 本来ならば、初孫の翔(中沢元紀/23)が野球部のエースとして活躍することを信じ、熱心に応援してきた犬塚も、病を患ったことで同情されるべき流れだった。しかし、小日向の憎まれ役の演技が上手すぎたこともあって犬塚の“暴走老人ぶり”が際立ってしまい、感情移入できなくなっている。なんとも皮肉な話だ。

 犬塚の病気を今後、どう収めるのか? 早く野球部以外の問題をクリアし、球児たちが栄冠をつかむ熱いシーンを、スッキリした気分で見たいものだ。(ドラマライター/ヤマカワ)