■温暖化で……日本が“理想”の棲み家に

 アジア動物医療研究センター長のパンク町田氏は、もともと野生種である特定外来生物が日本で繁殖するのは、「環境が合っている」からだと指摘する。

「温暖化によって、日本が彼らの本来の生態系、理想に近づいてしまったために繁殖力が上がっているということはあると思います。そのうえで、(日本にいる)タイワンリスはそもそも都会寄りの山にいるので、餌がなくなったときに街に降りてきやすいんですよね」(前同)

 タイワンリスの活動時期は一年中。家屋への害も無視できない。

「寒い時期は木の幹に穴をあけて樹皮の裏側にある糖質を食べるので、樹木自体を傷めます。家の中でも壁の隙間や屋根裏で繁殖し、そこで糞尿をするなど建物に対して被害を与えるリスクがあります」(同)

 被害は今のところ鎌倉市に集中しているが、周辺の自治体に及ぶことはないのか。

「タイワンリスは、日本のリスよりも生息密度(1平方メートルあたりの生息個体数)が高いんです。狭い範囲内でたくさん生息できるため、市内での“タイワンリス密度”が上がっているのでしょう。もちろん、もっと数が増えれば徐々に生息範囲が広がる可能性はあります」(同)

 体が小さく、凶暴性はないとはいえネズミの仲間。一見可愛いのは確かだが、見かけても捕まえようとしたり触ったりせず、距離をとるのが正解だ。

パンク町田
1968年東京生まれ。
NPO法人生物行動進化研究センター理事長、アジア動物医療研究センター長。特定非営利活動法人日本福祉愛犬協会(KCJ)理事。
日本鷹匠協会鷹匠、日本鷹狩協会鷹師、翼司流鷹司、鷹道考究会理事、日本流鷹匠術鷹匠頭。
昆虫から爬虫類、鳥類、猛獣などあらゆる生物を扱える動物の専門家。
野生動物の生態を探るため世界中に探索へ行った経験を持ち、『飼ってはいけない(禁)ペット』(どうぶつ出版)は大ヒットとなった。動物関連での講演、執筆、テレビ出演など多方面で活躍中。