■多額のバックアップ『U-NEXT』が希望したこと

 ドラマ制作会社関係者は話す。

「不動産事業や半導体事業だけではありません。TBSにはもう1つ、大きな収入源がありました。『VIVANT』はTVerの1週間見逃し配信を除くと、動画配信サービス『U-NEXT』で独占配信されていましたよね。『VIVANT』はTBSと『U-NEXT』が本格的に組んで1発目のドラマということで、『U-NEXT』からもかなりの制作費が出ていたといいますよ」

※画像は『VIVANT』の公式X(ツイッター)『@TBS_VIVANT』より

『U-NEXT』は国内向けメディアだが、海外資本の『ネトフリ』に次いで定額制動画配信(SVOD)で利用者が多いメディア。2022年のサービス別国内市場規模・シェアは、1位が『ネトフリ』(22.3%)、2位が『U-NEXT』(12.6%)、3位が『Amazonプライムビデオ』(11.8%)と、海外資本の企業を相手に善戦している。

 それだけ勢いのある企業のバックアップもあり『VIVANT』は莫大な予算をかけて制作できたと。一方で、前出の制作会社関係者は「1つだけ実現しなかったことがあったそうです」と言い、こう続ける。

「実は、『VIVANT』の放送前、『U-NEXT』から“地上波放送より先に独占先行配信をさせてほしい”という要望があったといいます。それを受け、TBSではかなり検討が重ねられたそうですが、結果的に実現しなかった。

 全話独占先行配信をして、しばらく間を空けて地上波放送――最近は深夜枠などのドラマではトレンドになっているやり方ですが、『VIVANT』では実現しなかった。ゴールデン枠のドラマであったこと、そしてやはり、『VIVANT』があまりにも期待の超大作だったことがその要因ではないでしょうか」(前同)

 地上波テレビでドラマが放送されて、多くの視聴者がドラマと一緒にCMを見ることで、CMの商品が売れ、企業名もより周知されていく――それが目的で、スポンサー企業は高額のCM料金を払っている。しかし、先行配信されてしまっては、地上波放送での視聴率が落ち、広告効果が薄れてしまう――そうしたことからスポンサーや広告代理店との調整がつかず、『VIVANT』の『U-NEXT』独占先行配信はなくなったようだ。

 最終的に『VIVANT』は地上波放送、その後『U-NEXT』で1話ずつ配信、放送終了から約3か月後に『ネトフリ』解禁という流れになったのだが、すでに水面下では、“新たな戦い”が始まっているようだ。