■「テレビ=公共の電波」であるという意識の低下

 前出の鎮目氏は、制作陣について「テレビ=“公共の電波”だという意識の低下」を危惧する。

「テレビマンが常に絶対に考えなくてはいけないのは、テレビは、見ている人の生活に”勝手に飛び込んでいく”媒体だということです。YouTubeや配信動画と違って、意図的に見ている人ばかりではない。

 ふとチャンネルをつけた時に、本来見たくないものが目に入ってしまう、聞こえてしまう、という可能性が十分にあることを考慮して番組づくりをしなくてはいけない」(前同)

 しかも『アド街』が放送されるのは21時から。ゴールデンタイムの番組については、さらに細心の注意が必要だと鎮目氏は語る。

「もしかしたら、番組が始まる21時は、サンタを待っているような子どもは寝ている時間だと思ったのかもしれません。ただ、今時のお子さんたちは普通にまだまだ起きている時間。土曜日の夜とあって、多少の夜更かしを許しているお家もあるでしょう。番組の性格を考えれば、普段は見なくても自分の住んでいる地元だから家族で見る、という人たちだっていたはず。

 全体的に、番組制作に向き合う姿勢が“甘く”なってしまっている。視聴者を無視している。反省してほしいと思います」(同)

 1995年4月から放送スタートし、来年放送30年目を迎える『アド街』。いくら長寿番組といえど、視聴者の信頼を損なうのは一瞬である。

鎮目博道
テレビプロデューサー。1992年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)