■人生を変えたジュリー・ロンドン

 八代さんの魅力のひとつは、そのギャップにあったと湯川さんは言う。

「ハスキーボイスを活かしてJAZZを歌うし、162センチと背も高い。一方で、とても純粋で少女のような心を持っていたんです。

 もともと、自分のハスキーボイスにも自信がなかったそうですが、小学校5年生の時に『酒とバラの日々』などの名曲で知られ、女優としても活躍したジュリー・ロンドンのレコードを聴いたことが転機になったと度々、話していましたね。

 自信満々でステージに挑んでいたかのように思われる人も多いと思いますが、実は繊細な心を持った人でした」

 79年には阿久悠が作詞を手掛けた『舟唄』が大ヒット。年末に出場した『NHK紅白歌合戦』では初となる大トリも務め上げた。

「この頃から自信がついてきたんじゃないですか。ステージ上でも歌詞に情感が込められていると感じることが増えました」

 当時の八代さんはまだ29歳。人生の酢いも甘いも経験しているとは言い難い年齢だ。それでも八代さんが詩に感情を乗せて歌う様子を見た湯川さんはこう感じたという。

「人の心に寄り添い、悲しみを歌詞で表現できる人でしたね。“お酒は~”の歌詞で始まる『舟唄』ですが、あとで本人からお酒が飲めないと聞いた時はビックリしました。それなのに哀愁たっぷりに曲を歌い上げるわけですから、曲を聞く人の心を汲み取るのが上手だったのでしょうね」

※画像は八代亜紀の公式インスタグラム『@aki_yashiro』より