■視聴者はついてきてくれるか?

 生きながら五感(聴覚・視覚・嗅覚・味覚・触覚)を失っていくという、残酷すぎる設定。しかも、虐待とイジメの過去を持ち、愛する人の事故と暗黒展開。視聴者が引くのも無理はないが、そこはあえての狙いなのだろう。脚本は、とにかく泣けると評判の恋愛小説家・宇山佳佑氏で、雨(永野)を追い詰めて涙を誘うつもりなら、その点では成功している。

 しかし、初回の視聴率の数字を見れば、その泣かせ作戦が仇になっていそうだ。放送されるのが月曜夜9時で、週の始めから重い作品を見るのは躊躇してしまうだろう。今後、回を追うにつれ切なさが加速していき、どこかで救いが匂わされるだろうが、それまで視聴者がついてきてくれるのか、微妙なところだろう。

 ただ、メインの永野と山田は好演している。《芽郁ちゃんのほほ笑みながら涙流すお芝居よかった…表情の演技が素晴らしい》《山田くんの高校時代の制服姿に違和感あったけど、彼の演技がそれを打ち消している》などの称賛の声もあったように、2人の演技が視聴者を取り戻すカギになるはずだ。

『君が心をくれたから』は今期のドラマの中で、一番の切ないラブストーリーになるのは確実だ。永野と山田の演技で重苦しさを気にさせないことによって、同枠で『真夏のシンデレラ』、『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~ 』と続いている、爆死状態からの脱却に期待したい。(ドラマライター/ヤマカワ)