■デーブ・スペクター氏は「作戦勝ち」と高評価

 インバウンド需要を見据え高価格化するB級グルメ。長年日本に住む、テレビプロデューサーのデーブ・スペクター氏は、「提供することを決断した店舗の作戦勝ち」だと評価する。

「外国人は文化として元々、シェアをして食べる傾向がある。いろいろなメニューを食べてみたいという気持ちもあるのでしょう」

 つまりはメニュー価格が多少、高価でもシェアして食べれば一人当たりの客単価はさほど高くはならないというわけだ。また、吉野家は全国チェーンであるがゆえにその利点を活かしてインバウンド向けメニューを勘案しているのではとデーブ氏は指摘する。

「吉野家は全国展開しているチェーン店ですし、様々なデータが各店舗から上がってくる。そのデータを見る中で、外国人観光客向けのセットメニュー販売に目をつけたということではないでしょうか」

 1月17日時点でのドル円相場は1ドルあたり148円台。円安が続く状況も高価格帯セットメニューの売り出しに拍車をかけているとデーブ氏は分析する。

「吉野家は今やアメリカにも”yoshinoya”として進出しており、“Beef Bowl(ビーフボール)”の名前で牛丼は大人気。来日して、本場の吉野家を楽しみたいという観光客も少なくありません。アメリカの吉野家では、日本のようにスーツを着たサラリーマンが大挙して押し寄せるなんてこともないですし、本場の雰囲気を味わえるのはやはり日本だけ。

 吉野家に行けば、代表的な日本料理の一つでもある、鰻重も味わえるとなれば、円安も相まって価格が多少高くても、セットメニューの需要があるのも必然です」

 かつて、外国人の日本旅行といえば、京都、富士山、箱根が定番だったが、その状況にも変化が起きているという。

「YouTubeを見れば、回転寿司やラーメンを紹介する動画は山ほどあります。昔のように観光ガイドブックを読んで日本に憧れる時代ではない。外国人観光客が来日する目的は日本食なんです」(前同)