■加藤「伊集院先生の感想がもう聞けないのかということが心残りです」

 加藤は、2020年に上梓した長編小説『オルタネート』(新潮社)も第164回直木賞候補に選ばれ、選考委員だった伊集院さんの選評も受けていたが、受賞は逃した。そのため加藤は、昨年12月に『なれのはて』が直木賞候補に選ばれた際の囲み取材で、「(当時)“受賞できなかったのは私(伊集院)の力不足だ”と言わせてしまったことが心残り」「もう少し(『なれのはて』を)早く書けていれば。間に合わなかったことが悔しくて、伊集院先生の感想がもう聞けないのかということが心残りです」と、コメントしていた。

「自分を気にかけてくれていた伊集院さんのためにも、今度こそ直木賞作家になりたかった、という強い思いがあったと考えられます。加藤さんは受賞を逃してしまいましたが、まだ直木賞候補に選ばれたのは『オルタネート』と『なれのはて』の2度だけ。

 対して、今回受賞した万城目さんは2007年に『鹿男あをによし』で初めて直木賞候補に選ばれてから長かった。6度目の候補だった『八月の御所グラウンド』で今年、直木賞を受賞するまで、17年も要しています。加藤さんの『なれのはて』は審査員からの評判も良かったし、まだまだこれからではないでしょうか」(前出のワイドショー関係者)

※画像は小説『なれのはて』の公式X『@narenohate_kds』より

 選考委員の林真理子氏(69)は、『なれのはて』に対する選考委員からの評価を明かしている。「少し登場人物が多く詰め込みすぎだったのではないか」という意見もあったというが、「加藤さんは本当に1作ごとに成長を見せているので、次作が楽しみ」「これからもお書きいただきたい」という声もあった、ということだ。

 作家として着実に成長を続けている加藤。天国の伊集院さんに吉報を届けられるその日まで、書き続けるのだろう――。