「かなり厳しいな……という印象です」

 そうため息混じりに話すのは朝日新聞の現役記者。最盛期だった1998年には837万部の発行部数を誇った朝日新聞も近年は部数が激減。2023年に公表された発行部数は364万部と、最盛期の半分以下にまで発行部数が落ち込んでいるのだ。

「23年5月1日には愛知、三重、岐阜の3県で夕刊を休止。北海道でも24年4月を持って夕刊の発行がストップすることが、2月7日の朝日新聞朝刊で伝えられました」(前同)

 中部地方に続き、北海道でも夕刊休止となったウラには、どんな事情があるのだろうか。

「中部地方では、ライバル紙である中日新聞が東海3県を中心に200万部超えと、根強い支持を得ています。北海道でも同様に、北海道新聞がおよそ80万部と強い。地方紙が強い地域で、朝日は購読者をつかめずに沈んだ、ということです」(同)

 配送地域が広い北海道で、朝日新聞の夕刊発行部数はわずか1万3000部。夕刊は朝刊を印刷に回したあとの深夜1時から午前10時〜11時の間に起きたニュースで構成するため、その間に記者が取材や執筆をする必要がある。人件費や取材のための移動費など、金銭的な負担も発生する。

「働き方改革を前面に出して、地方紙が強い地域から夕刊は撤退するつもりなのでしょう。会社としては経費削減もできますし、記者の長時間労働も防げますからね……」(同)

 こんな状況を「時代の流れですかね」とあきらめ混じりに語るのは、多くのテレビ番組でも活躍し、社会部の新聞記者を主人公にしたマンガ『こちら大阪社会部』(講談社)の原作者としても知られる元読売新聞記者の大谷昭宏氏(78)である。

「夕刊が作られる時間帯は深夜がメイン。当然、政治も経済も動いてない。夕刊に入る原稿でニュースと呼べるのは事件物だけ。企画物や書評のような読み物だけで作られた新聞なら、新書や雑誌のほうが良いという読者だっているでしょう。

 それに、スマホを通じて、SNSやウェブサイトで読むニュースで十分という人も少なくない。ニュースを知るのに夕刊が家へと届くのを読者が待つ必要はないのです」(大谷氏)