◼️優秀な記者が育たなくなる

 経営サイドの観点から考えると、朝日新聞に限らず、読者のニーズがない地域に新聞を届ける必要もなくなり、配送料や輸送費、紙代といった経費も夕刊の廃止によって圧縮される。しかし、このサイクルが続くと「新聞社は自らの首を絞めることになる」と、前出の大谷氏は続ける。

「経営を合理化するのは大事です。でも、僕らの時代は新聞記者と言えば取材先への夜討ち朝駆けは当たり前。労働時間もへったくれもありませんでした。

 そういう労働環境で、会社の経費を使って取材をすることで、記者としての足腰や人脈を鍛えていました。“経費削減”や“働き方改革”を錦の御旗に、お金が掛かる事件取材の現場から新聞記者が離れれば、企業や政権の不正を暴く調査報道などができる優秀な記者が育たない可能性があります」(前同)

 奇しくも朝日新聞が北海道からの夕刊撤退を発表した前日の2月6日には、盛山正仁文部科学大臣の旧統一教会との関係が1面を飾ったばかり。

「言わずもがな、盛山大臣への給料や文書交際費は国民の血税から捻出されています。優秀な新聞記者がいなくなれば、こうした調査報道はできなくなる。夕刊廃止は経営の合理化の観点だけから見れば正しい選択なのかもしれません。しかし、合理化だけでは新聞記者は育たず、読者が読みたいニュースを届けることはできなくなるのです」(同)