◼️ニュースの空白地帯が生まれるリスク
メディアの多角化により止まらぬ新聞離れもあるが、新聞社も読者に新聞を手に取ってもらう機会を放棄しているように、前出の大谷氏の目には映るということだ。
「日本よりもローカルペーパー(地方紙)の数が多いアメリカでは、スマホの普及によりローカルペーパーの廃刊が相次ぎました。ローカルペーパーがない地域では、政治家の汚職などを取材できなくなります。アメリカでは新聞文化が廃れたことで、地方議員による不正が蔓延しているともいわれている。このままでは、日本でも同じことが起きかねません」(大谷氏)
また、読者がSNSやウェブサイト上だけでニュースを得るのは、非常に危険だと大谷氏は話す。
「ウェブニュースでは、サッカーが好きな人にはサッカーのニュース、野球が好きな人は野球のニュースといった形で、読者の嗜好にあったニュースが提示されます。一方で新聞は社会面から政治面、文化面まで様々な情報が掲載されている。社会を総合的に知り、様々な知見を得るという観点からは新聞は有用なメディアだと思います」
人々への情報伝達手段として飛躍を遂げ、多くの人の手に取られてきた新聞メディア。媒体が岐路に立たされ、今後の市民生活にも影響が出るやもしれない。
大谷昭宏
東京都生まれ。早稲田大卒業後、読売新聞大阪本社に入社。記者時代は大阪府警捜査1課などを担当。事件記者として上司である故黒田清氏とともに「黒田軍団」の一員としてグリコ・森永事件など数々のスクープをものにした。1980年から朝刊社会面コラム欄「窓」を7年間担当。87年退社後は大阪に事務所を設けてジャーナリズム活動を展開している。