■昭和と令和を描く作品がコア層の中心・平成世代に刺さった

 テレビ番組のコンプラライアンスやハラスメント――数字が良かった『ふてほど』の第3話は、まさにそれを風刺した回だった。

 令和パートではお昼の情報番組が登場。鍋特集なのにMCの八嶋智人(53/本人役)が「お鍋はきりたんぽ一択」とオープニングトークで話すとスタッフから下ネタ扱いされて、「下ネタじゃない! アンタこそ秋田の人に謝罪して」と困惑。

 その後も「髪切った?」「かわいい~っ」「(食レポで)麺がしこしこ」「(カニクリームコロッケの)中がトロトロ」など、何を言ってもハラスメント扱いされて八嶋が放送中何回も「先ほど不適切な発言が~」と謝罪する羽目に――という展開が描かれた。ミュージカルふうの演出でハッキリと「(何やってもハラスメント扱い)だからテレビつまらない」と歌詞テロップまで出す、強烈な風刺だった。

 対する昭和パートでは、過激で面白そうな昭和のお色気深夜番組『早く寝ナイトチョメチョメしちゃうぞ』が登場したが、こちらもすべてを肯定的には描かれていなかった。主人公・市郎(阿部)はこれまでスケベ親父として番組を楽しんでいたが、娘・純子(河合優実/23)が出演することになり、セクハラ演出の数々に気が気でなくなる――という展開だ。

 2つの時代を描き、最終的に“女性に対するハラスメントのガイドラインは、娘に同じことができるかどうかじゃないか”という見解を『ふてほど』は示した。

※画像は『不適切にもほどがある!』の公式X『@futeki_tbs』より

「さすがに誇張されていたものの、現代のテレビ番組はコンプライアンス、ハラスメントを意識しすぎるあまり、冗談ではなく『不適切にもほどがある!』の劇中のようになりつつありますよね。

 たとえば、罰ゲーム中のリアクションで“痛い”が禁句になっている、というのは有名な話です。ハリセンで叩くことすらNGに。派手な音だけど痛くないように作られたアイテムだったのに、“痛そうに見える”時点でもうアウトと……」(前出の制作会社関係者)

 そんな令和のテレビをリアルタイムで味わっている30代が青春を過ごした90年~2010年代前半は、過激な罰ゲームや、まさに令和では「不適切」な下ネタやギャグがテレビで幅を利かせていた最後の時代。

 そのため、どちらの時代も知る層から、

《30代にとってはどっちの気持ちもわかるっていう傍観者目線で見られるから見てて楽しい》
《令和コンプラ時代を皮肉るだけじゃなく、昭和の過剰で凝り固まった感覚も皮肉ってるの流石だし、今のところどっちもイヤな平成世代w「程々でちょうどいい」が1番なのよ》
《平成に生まれて社会人になっても平成で生きてきた私としては昭和と令和の間がいいぜーー!!この時代にこんなドラマを見れる世界線に生きれたことに感謝》

 といった声が多く寄せられているのだ。

「2024年で、平成元年(1989年)生まれは35歳。まさに各局が求めているコア層のど真ん中が、昭和と令和のどちらにも共感できるドンピシャ世代だったということですよね。現時点では昭和の楽しい部分、令和の窮屈な部分が強調されていますが、本作は一筋縄ではいかないクドカン脚本。

 昭和の辛い部分、令和の楽しい部分も今後フォーカスされて、それがまた反響を呼び、盛り上がりを見せていくのではないでしょうか」(前同)

 タイトル通り不適切な単語が飛び出すことも珍しくない『不適切にもほどがある!』。だが、その圧倒的な人気ぶりは適切なようだ――。