■NHKが情報番組で「やってはいけないこと」

 NHKが午後帯は5時間にも及ぶ生中継番組を放送することを決断、大きく変わる番組改編。5時間にも及ぶ情報番組は、どんな内容になるのだろうか。前出の鎮目氏は「NHKらしさが重要」と話す。

「取材力とアーカイブを活かして、きっちりとした内容で中身の濃い、見応えがある番組作りができると民放との差別化になり、“さすがNHK”と思わせられますよね。

 しかし、民放の情報番組が制作する『週刊文春』(文藝春秋)や『週刊新潮』(新潮社)が報じた芸能ゴシップや政治家のスキャンダルをなぞるだけの番組作りを真似しようとしたらかなり痛々しいことになるでしょう。

 公共放送ということで、尖った芸能ゴシップは扱えないでしょうし、過激な発言で注目されるようなコメンテーターの起用も望めない。一歩間違えると、とんでもなくできそこないの番組が生まれてしまう。うっかり民放を意識しないほうがいいと思います」(前同)

 また鎮目氏が最も危惧するのが「番宣」だ。

「NHKって番宣が大好きなんですよね。たとえば大河ドラマ放送前にはその関連番組を作って盛り上げたり、朝ドラでも同様です。全国の地方局では、朝ドラや大河など大きな番組に絡んだコンテンツを常時作っている。

 今回全国ネットの情報番組ができるということで、それらのコンテンツが一斉に放出されると、番宣まみれになりかねません。

 NHK内でも、午後の長い放送時間を報道部門が取ったのですから、制作側の部員は”ドラマの宣伝ぐらい番組内でしろよ”という思いにもなるでしょう。全国各地から番宣が降り注ぐ……なんてことになれば、目も当てられないような番組になってしまいますね」(前同)

 称賛かガッカリか、視聴者の反応が極端に分かれそうなNHKの番組改編。この春からのNHKの午後には大きな注目が集まる。

鎮目博道
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)