■東大がグローバルを意識した「新課程」を設ける“危機感”
「東大のようなトップ国立大学では国家を担い、社会貢献できる人材を育てるという目的がある。それなのに、優秀な若者は産業界でも学術界でもどんどん海外へと流出するという実態があります。大学受験においても、優秀な高校生のなかには東大よりも海外の大学を志望する学生が昔からいましたが、その意識が加速度的に広まっている」(前出の常見氏)
優秀な人材が海外の大学を目指す理由は、やはり教育環境の違いが大きいという。
「たとえばアメリカのトップ校だと、世界中から多様なバックボーンを持つエリートが集まって来るので、自ずとグローバルな視野でものを考えることができるようになります。各国の次世代リーダーと切磋琢磨することができるうえ、グローバルな人脈が構築できます」(前同)
一方、日本の大学制度はどうか。
「日本の大学で従来から指摘されてきたのは、学問が“縦割り”ということ。そもそも入学時点で学生は文系と理系に分けられてしまう。
もちろん、文系・理系の学問が融合した学部を作る試みはこれまでにもありました。でも、そこで学んだ学生が、その学びをつなげて考える頭を鍛えることができていたのか。大学も上手く学生をナビゲートできてきたのか。学生にしてみれば、“いろいろ学べて楽しいけど、結局何を学んだのか、何ができるようになったのか”がわかりづらいまま大学生活が終わっているケースが散見されます。
そうしたなかで、本質的にハイブリッドな学びができる場を作らなくてはならないことにやっと大学側も気づいてきた。2024年10月1日には、やはり国立大学である東京工業大学と東京医科歯科大学が統合し、東京科学大学が設立されます。これもハイブリッドな学び、先端領域に関する危機感がある表れでしょう」(同)