■中国版インスタ「RED」での話題っぷり

 なぜ中国版インスタグラムRED上で、この『ステーキライス』が話題となり、中国の人々から高い支持を得ているのか。

『ルポ 中国「潜入バイト」日記』(小学館)などの著書があり、中国事情に詳しいノンフィクションライターの西谷格氏は、中国人にとっての『RED』の位置付けと中国人の特性が『ステーキライス』人気に関係していると指摘する。

「中国では3億人以上が使用するREDですが、主な利用者は1990年以降に生まれた若年層。都市部での利用者が半数を占めています」(西谷氏)

 都市部での利用者が多いこともあって、中国のトレンドを強く反映するアプリの一つだという。

「REDはサジェスト機能がインスタやX以上に強力な印象です。サジェスト機能により、一度、ユーザーが閲覧したものや“いいね!”を押した投稿の関連情報が次々に出てくるんです。

 また、中国人は日本人以上に“これが人気”というものに集団で飛びつく傾向が強いんですよね。人口が多いこともあって、国民の間でブームか起こりやすい印象があります」(前同)

■「センタービーフ」が中国人の心にヒットするポイントは

 では、『センタービーフ』の何が中国人の心を捉えるのか。

「一番大きいのは、“親しみやすさ”と“非日常”のバランスが、彼らにとって絶妙だった点だと思います」(前出の西谷氏)

“親しみやすさ”と“非日常”とは。

「大皿にごはんとおかずを一緒にのせたぶっかけごはんは、中国では『蓋澆飯(ガイジャオファン)』と呼ばれ、広く愛されている食事スタイルです。おかずは麻婆豆腐やチンジャオロース、じゃがいも炒め、きのこ炒めなどなど、さまざまなパターンがあり、ワンプレートでごはんの上に肉や野菜がのったメニューは、中国人にとって親しみやすいのかなとも思います。

 一方で、異国へ訪問する観光客としては“非日常”を味わいたい。それが生卵であり、生っぽい肉なのでは」(前同)

“生”の食材を食べる習慣がない中国人にとって、生食にチャレンジすることが“非日常”であり、「日本」を感じるポイントなのかもしれない。

「REDでも、『ステーキライス』に関する投稿を読むと、“生に抵抗がない人はぜひ”という注釈がつけられているものが散見されます。中国人にとって、ほどよく理解できる部分とちょっと挑戦できる部分がある。その塩梅がちょうどよかったんだろうと思いますね」(同)

 中国からの観光客を中心に、高い人気を誇るステーキライス。その人気の理由を知れば、中国4000年の食文化も少し見えてきた――。

西谷格
1981年、神奈川県生まれ。ノンフィクションライター。早稲田大学社会科学部卒。地方新聞の記者を経て、フリーランスとして活動。2009年に上海に移住、2015年まで現地から中国の現状をレポートした。主な著書に、『香港少年燃ゆ』(小学館)、『ルポ デジタルチャイナ体験記』(PHP研究所
など。