■ワークマンのライバルはしまむらか

 メイン客層である子育て世代により多くの商品を購入してもらうことで、売上高を向上し、利益を得ようと目論んでいるということか。この背景には、ワークマン独自の戦略も影響していると前出の岩崎氏は指摘する。

「ワークマンは自社のオリジナル商品を作って店舗で販売している。同じ素材で大量に商品を作るため粗利益が、他のアパレルブランドに比べて高いんです。なおかつ広告宣伝費はあまり使わない。利益が出るわけです」

 ワークマンの子ども服事業進出。競合となるブランドはどこになるのだろうか。

「ユニクロやGUはファッション性がより高いのでワークマンのライバルにはならないでしょう。一方でキッズ用品をメインで扱う西松屋や赤ちゃん本舗は、ワークマンより価格が安い。最も影響を受け、ライバルとなるのはしまむらでしょうね。地方の幹線道路沿いに店を構えるという立地もワークマンと同じですし、実用性を備えた服の販売に力を入れているという点や価格帯も似ています」(前同)

 ワークマンは年間売上高200億円を子ども服事業で目指すと発表しているが、実現は可能なのか。

「ワークマンの店舗は平均で120坪。その内、15坪ほどを子ども服事業のスペースに割く予定です。すると店全体の12.5%を子ども服事業に割く換算になる。ワークマン1店舗あたりの年間売り上げは平均して1億4000万円ほど。

 その内12.5%に該当するのは1750万円。ワークマンはおよそ1000店舗を全国で展開していますので、全店での子ども服事業の売り上げは175億円ほどにはなると単純計算でも推計される。子ども服事業で年間200億円の売り上げを得るのは不可能ではないと思います」(同)

 建設業界で働く労働者向け衣料メーカーの枠を飛び出し、総合衣料メーカーへと変貌を遂げようとしているワークマン。改革の先には、激しい競争が待っている――。

岩崎剛幸
1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、同社創業。流通小売・サービス業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。著書に『図解入門業界研究 最新 アパレル業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』(秀和システム)
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