■令和以降、戦隊を崩した作品が続いていた
『ブンブンジャー』の“原点回帰”の理由――もう1つは、やはり前作の『キングオージャー』が非常にイレギュラーな作品だった、ということだ。
特撮に興味がない層は『戦隊ヒーロー』をこうイメージするだろう。
“正義感の強い5人の若者が、悪の組織が送り出す「今週の怪人」を倒して、締めに巨大ロボで戦う1話完結の物語”
その通りだが、実は第44作目の『魔進戦隊キラメイジャー』(2020)を最後に、このフォーマットはギリギリ残りつつも、大幅に“基本”を崩した作品が3年連続で続いていたのだ。
・『機界戦隊ゼンカイジャー』…主人公以外の4人がロボ(顔出し俳優ではない)。
・『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』…一斉変身や“名乗り”がほぼないほか、あまりにも多数の変更点。
・『王様戦隊キングオージャー』…連ドラ性が強く1話完結の話や“今週の怪人”が例年より少ない。
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『ゼンカイジャー』は初期メンバーの構成以外は従来の作品に近いところもあったが、『ドンブラザーズ』はとんでもなかった。“変身前はメンバー全員顔見知りだが、中盤までお互いが戦士だと気づいていない”“戦闘シーンがほぼオマケの回も多い”などなど、いろいろと革新的だった。
『ドンブラザーズ』を手がけた白倉伸一郎プロデューサーは22年3月に『オリコンニュース』にて、
《スーパー戦隊シリーズは卒業しやすいと言われていて、4~5歳の子たちから『こんな幼稚なものはもう見ない』と言われてしまうことが増えています》
とコメント。昨今の『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』など大人目線では「小さい子が観て面白いのかな」と思う作品がウケていることから「子どもをあなどってはいけないということを改めて強く感じたし、居住まいを正されました」と、作風に多大な影響を与えたことを話していた。
そして、極めつきが『キングオージャー』だった。戦隊としての道を壊さずに、新たな道を模索して制作。さらに当時設立されたばかりの東映バーチャルプロダクション部の存在もあり、王道のヒーローものでありながらも『戦隊』としては異色の構成の作劇となったのだ。