■物流業界で目前に迫る「2024年問題」

 ただでさえ、ネット通販が当たり前の世の中で物流量は増加中。しかし、それとは対照的に、配送業界もご多分に漏れず人手不足にあえいでいる。商品を消費者のもとへと配送する人がいなくなったら、多くの人が困るのは火を見るよりも明らかだ。

 そんな実情を『FNN Live News α』(フジテレビ系)など、テレビ番組でもコメンテーターとして活躍する流通アナリストの渡辺広明氏は「サービスに対して、それ相応のコストを利用者が負担することに慣れていかなければいけない」と、現状の配送業界に潜む歪みに、原因のひとつがあると指摘する。

「物流が止まる例には台風や地震などといった自然災害がありますが、ストライキは人為的なもの。

 今回のケースはまだまだ小規模ですが、今後の問題でいうと、4月からトラックドライバーにも適用される働き方改革により、ドライバーの時間外労働が規制されます。このことで、残業代がこれまでのようには得られなくなり、収入減を理由に離職する人が出てくる可能性はあります。もちろん、大量離職が起き人手不足となれば、残ったドライバーの方々は希少人材となるため、賃金が上昇するケースも出てくるでしょう」(渡辺氏)

 4月からトラック運転手にも導入される働き方改革。これにより、トラック運転手の残業時間は年間960時間以内と制限されることとなる。運送業界でも代替手段として鉄道輸送への切り替えなども検討されているという。当然、配送状況や配送運賃にも変化が起こるはずである。

「労働時間が見直されることで、届くまでの日数がこれまでよりもかかるといった影響も起こり得る。運送業界への働き方改革導入により、ますます需要と供給のバランスが崩れることが予想されます。そのため、物流の流れが日本全国で滞る可能性も想定されるわけです」(前同)

 渡辺氏は「日本全国で物流の流れが分断されないようにするためにも、消費者の意識変革が必要」と語る。

「サービスって本来無料じゃないですよね。これからはサービスを受ける人が、それに見合った対価をしっかりと払うようになるべきだと思います。より細分化されて、翌日着なら追加いくら、再配達ならいくらとか。最終的にはドライバーの方が継続して働けるためにも待遇が良くなっていくべきですよね」(同)

 アマゾンは2024年3月29日以降、通常配送の配送料無料の基準を現行の2000円から3500円に引き上げる。働き手の減少とは対照的に、どんなものでも送料は安く、すぐ到着するといった便利さに慣れすぎている日本の消費者。やはり、消費者が意識を変えることこそが日本全国の物流網の維持へとつながるのかもしれない。

渡辺広明
1967年生まれ、浜松市出身。東洋大学法学部経営法学科卒業。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長・スーパーバイザーを経て約16年間バイヤーを経験。日用品を中心に、さまざまなメーカーと約780品目の商品開発に携わる。
顧問、講演、メディア出演等幅広い活動を行っており、現在フジテレビ『LiveNews α』レギュラーコメンテーター。Tokyofm 『馬渕・渡辺の#ビジトピ』パーソナリティ、YouTube 『やらまいかビジニュース』。著書に『コンビニが日本から消えたなら』(ベストセラーズ)、『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』(フォレスト出版、馬渕磨理子との共著)等。