15年ほど前に各酒類メーカーがこぞって参入した、アルコール度数8%以上の“ストロング系”飲料市場。2008年に起きたリーマンショックを機に消費者の財布の紐が閉まったことで、各社お得に酔える酒として販売をスタート。一時は一世を風靡したが、今や“体に悪い”として各社販売を自粛気味。そんな中、代替商品として販売されている低度数のアルコール飲料に注目が集まっているという。

 全国紙経済部記者が酒類の販売状況の変化を語る。

「ストロング系飲料との決別を最初に宣言したのはアサヒビールでしたね。20年には79品目ものストロング系飲料を販売していたアサヒビールですが、翌21年には販売方針を一転。同年3月にアルコール分0.5%の『アサヒビアリー』を販売し、“微アル”市場の開拓を始めました。現在ではストロング系飲料の販売はわずか2品目に。ストロング系飲料市場からは明確に手を引いた印象です」

 アサヒビールの動きに続いたのはサッポロビール。こちらもピーク時には20ものストロング系飲料を展開していたが、現在販売するのは1品目だけ。”微アル系”飲料としては21年秋からアルコール分0.7%の『ザ・ドラフティ』を市場に投入。アサヒビールとしのぎを削っている。

「一部ではストロング系飲料が原因で、若年層の間でアルコールによる悪影響が広がっているとも報じられています。このことを懸念してか、両社ともに新商品は発売しない方針。この流れは他の大手メーカーにも広がっていますね。キリンビールも今後、ストロング系飲料の販売には慎重な姿勢。また、『ストロングゼロ』で知られるサントリーも過去にはストロング系市場に15品目を展開していましたが、現在は9品目にまでラインナップを縮小させています」(前同)

 各社ノンアルコール商品や度数3%程度の低アルコール飲料、さらに度数を1%以下に押さえた微アルコール商品のラインナップを拡充しようと努めている。背景にはどの様な理由があるのだろうか。かつてはストロング系飲料を好んで飲んでいた若者は、低・微アルコール飲料を本当に飲んでいるのか。

 芝浦工業大学デザイン工学部教授で、若者研究の第一人者であるマーケティングアナリストの原田曜平氏は、「お酒は、飲むか飲まないか、2極化している」と若者のリアルを指摘する。