■若者の飲酒体験を奪った経済の冷え込みと「時代」
若者の間でも真っ二つに割れる酒を”飲む派”と”飲まない派”。前出の原田氏に、若者の飲酒環境について「過去」と「今」を俯瞰してもらうと、見えてくるのは経済・社会状況と“上の世代”による影響だという。
「昔は、お酒を飲むことに関して社会的強制が大きかった側面がありますよね。大人の嗜みの一環として、本人が“飲めるようにならなきゃ”とか、先輩や上司のおごり文化の下、“俺の酒が飲めないのか”といった圧があったものです。
でも時代とともに、イッキ飲みで救急搬送されたり亡くなったりする若者が出ることが社会問題化されてきた。もちろん昔からアルコールの強要は問題視されていましたが、SNS時代の今、そんな若者が出た大学や企業、飲食店は、一瞬にして広く社会的信用を失ってしまう。そんな時代だからこそ、上の世代が若者に飲ませないように気をつけるようになりました」(原田氏)
たとえば飲食店が未成年者であることを知って酒を提供した場合、50万円以下の罰金に処せられる「未成年者飲酒禁止法」があるが、昔は“見て見ぬふり”も横行。しかし今は店側が未成年者の飲酒を厳しく警戒する。
並行して経済の冷え込みとともに“おごり文化”も消滅。会社で使える経費も減った。さらにアルコールの無理強いは“パワハラ”“アルハラ”に繋がる懸念があるという認識も広まり、上の世代が下の世代を酒の場に連れていく機会は激減してきた。
「誰だって、最初はビールなんて苦くて飲めないという体験をするものです。でも、少しずつ飲む機会が増えるなかで、いつの間にか美味しいと感じるようになる。
飲ませ過ぎはアウトですが、先輩に連れていってもらった和食屋さんで、日本酒と和食が合うことを覚えるというように、食育ならぬ“酒育”があった。今の時代、若者がそのプロセスを踏むチャンスもなくなっているのは確かです」(前同)