■新NISAは「自力で老後資金を調達してくれ」の合図か

「地方では車なしでは生活が困難なだけに厳しいです。原油高、人件費アップ、宅配便でいえばドライバーの労働時間上限規制の『2024年問題』が4月から本格化し、物流費アップもありますが、中には“みんなで上げれば怖くない”と言わんばかりに、便乗値上げしてくるところもあると思います」(前出の川口氏)

 日経平均株価が4万円を突破したなどと景気のいい話がある中で、景気回復を実感できないのは、なぜか。

「日本企業の株の多くを買っているのは、海外の富裕層です。特にコロナ後、世界中が金融緩和の中で、日本株が極めて割安だからに過ぎません。確かに日本の大手企業の業績はいいですが、その主な原因は円安効果と値上げによるものです」(前出の中森氏)

 つまり、株価の上昇は庶民の負担増の上に成り立っているというのだ。さらに、新NISAなど、政府が投資を勧めるのも株価上昇の一因ではあるが、

「年金制度が破綻の危機にある中で、自力で老後資金を調達してくれと言うのが本音でしょう」(前同)

 中森氏によれば、値上げできるのは価格競争力を持つ大手企業だけで、スーパーを例に取れば、地方の中小零細は値上げさえできず潰れている。春闘で賃上げされるのも大企業だけで、実質賃金は22か月連続で下がっているのだという。

 そんななか、日銀はマイナス金利政策の解除を決定。今後、日米の金利差が縮まり、円高になって物価下落の期待も持てそうにも思える。だが、中森氏は言う。

「中国を見ても分かるように、今年から世界経済の減速が本格化します。その中で利上げなんかしたら、大企業の業績まで悪くなってしまいます」

 そうなるとさらに日本経済は冷え込み……貧富の格差は拡がるばかりだ。