高級マンションの代名詞とも言える「億ション」。かつては憧れと羨望の的であった「億ション」だが、東京都内では珍しいものではない。

 マンション事業に詳しいジャーナリストが解説する。

「不動産経済研究所がまとめた、2023年発売の新築マンション1戸あたりの平均価格は1億1483万円。22年の平均価格が8236万円だったことを考えると大幅に値上がりしています。背景には円安による建築資材価格の高騰と、現場で働く作業者の人手不足が影響しています」

 この影響は東京に限らず、地方にまで広がっているという。

「人口が多く、大企業の本社ビルも集まる東京都内に限らず、地方都市にも“億ション”クラスのタワーマンションが建設されていますね。いま、注目を集めているのは北海道旭川で大和ハウスが手掛ける地上25階建て、総戸数151邸のプレミスト旭川ザ・タワーです。旭川駅から徒歩4分の好立地にあります」(前同)

 旭川の人口はおよそ33万人。近年は人口も右肩下がりで、大都市圏と呼ぶにはいささか心許ない。それでも最上階となる25階にある156平米超のペントハウスのお値段は、3億5000万円と東京都心のタワーマンションに負けず劣らず強気の価格設定。それでもすでに成約済みという。地元の不動産業界関係者が話す。

「25年2月に完成となるマンションですが、全体の6割以上の部屋は成約済みと聞こえてきています。旭川駅周辺とはいえ23年の公示地価は坪24万円台。それが、プレミスト旭川ザ・タワーは低層階でも坪単価はおよそ180万円。

 マンションの平均坪単価は260万円前後とあって旭川市内では、突出して高い。当初は地元の不動産業者の間でも“このマンション売れるの?”と疑問の声も出たものです」

 それが蓋を開ければ予想外の快進撃だという。売れに売れているわけだが、その理由はなんなのか。プロジェクトを手掛ける大和ハウスの関係者が話す。

「1つは旭川にそこまで新しいマンションがないから。地元の医師や地元企業の社長など地域の富裕層が購入者の6割ほどだと聞きます。残りの4割ほどは関東圏など道外の方ですね。冬にスキーを楽しみたいといった方がセカンドハウスとして購入を考えているようです。

 現に購入層の平均年齢は50代と金銭的に余裕がある方ばかり。東京のマンションと違って中国人富裕層が投資目的で購入するということはほとんどありません。ただ、近年起きたスキーリゾート地であるニセコの影響で、雪を楽しみ北海道の冬に魅力を感じている外国人の方が多いのも事実。シンガポールや台湾の方からも資料請求は受けています」

旭川でタワーマンションプロジェクトを進める大和ハウス工業株式会社 撮影/編集部