■『ふてほど』の成功で情報&バラエティ番組でも“お断りテロップ”が流行するか

 前出の鎮目氏が続ける。

「テレビの場合ですと、ナレーションで“スタッフが美味しくいただきました”と入れるとそれまでの流れや旅情を切ってしまう。テロップは番組の流れを切らずにクレーム抑止につながるとあって効果的だったのです。

 他にもテレビに寄せられるクレームですと、通常入ってはいけない特別な場所や大行列ができるような人気店に入って取材をすることもあるわけです。そのような場合に“特別な許可をもらって撮影しています”と入れます。

 また、“危ない”というクレームもテレビ業界の定番です、このような場合は“専門家の指導のもと行なっています”というテロップを入れます。ちゃんと専門家に聞いたうえで行なっています、指導のもと、安全に配慮していますというアピールですね」

 ナレーションではなくテロップで表示させることにも意味があるようだ。

※画像は『不適切にもほどがある!』の公式X(ツイッター)『@futeki_tbs』より

「こういった類のテロップは“エクスキューズテロップ”と業界内では呼ばれています。要は視聴者へのはっきりとしたアピールですよね。

 しかし、その手のテロップが増えすぎたことで、作り手側も“言い訳ばかりだよね”と薄々感じるようにはなっていました。テレビマン同士で話すときも、“最近のテレビはテロップだらけで逃げを打ってダメだよね”と苦笑していましたね。

 そういう意味では、ドラマ『不適切にもほどがある!』はテレビマンの間ではすごくウケていますよ。本当は逃げを打つための道具であるテロップですが、それを逆手にとっている。テロップを笑いに変えているわけです。そういう意味で、“あのテロップの使い方は良い”とかなり話題になっていますね。

 話題の『不適切にもほどがある!』のテロップ芸ですが、そもそもがあのドラマにマッチしている。番組はコンプライアンスを逆手にとって笑いに変えているのでテロップ芸を取り入れやすい。

 要はコンプライアンスを皮肉ってテロップを使い笑いに変えているからですが、本当にクレームが来たとしても“一言入れていますよ”という形で逃げも打てる。テロップで笑いを取るというのは、同ドラマで生まれ、定着していきそうな感じですよね。同じようなテロップでの演出は今後、視聴者を笑わせるバラエティ番組や情報番組を中心に増えていくと思いますよ」

 画期的な連ドラと称される『不適切にもほどがある!』は、今後のテレビ番組制作にも小さくない影響を与えているようだ。