「まさか、小学生が合格するとは!」
そう驚いた大人も多かっただろう。
三重県尾鷲(おわせ)市に住む小学6年生・内山雄介くんが、今年1月に県内で行なわれた魚のフグを処理するための資格試験を受け、県内史上最年少で合格を果たしていたのだ。内山くんが受験したフグ処理試験の出願者は65人。出願者の大半は調理師専門学校などに通い、未来の料理人を志さんとする人たちばかり。そんな受験者に囲まれた12歳の少年は、いかにして合格者に名を連ねたのか。内山くんの師匠が明かす、合格までの道のりーー。
「正直、試験前から合格するんちゃうかなと思ってはいました。彼ね、めちゃくちゃ魚好きなんですよ」
そう興奮気味に話すのは、フグを処理する資格試験に合格した内山くんが“師匠”と呼び慕う北村豪さんだ。地元で鮮魚店・丸清北村商店を営む北村さん。内山くんと出会ったのは1年ほど前のことなだという。
「尾鷲港の釣りスポットでルアーを使ってタコを捕まえていたんです。そしたら内山くんが“どうやったらタコは釣れるんですか?”と、声を掛けてきて。尾鷲港ではアオリイカがよく獲れるんですが、タコは滅多に釣れない。
“教えてください”と言うし、話を聞いていたら、普通の人は釣っても捨てるような雑魚や魚の臓物を使って塩辛やカラスミを作ると言う。これは見どころがある子やなと思い、魚のい・ろ・はを教えることにしたんです」(前同)
魚が大好きという内山くん。北村さんの指導の下、60キロはあろうかというキハダマグロの処理に挑戦したこともあったそうだ。その若さゆえの吸収力の高さも手伝って、メキメキと腕を上げていった。そんな内山くんの様子を見た北村さんは、ある提案をする。
「三重県でも2023年度からフグ処理者免許試験の要項が変わったんです。今まではフグ処理に関する従事経験などが受験要項にあったのですが、撤廃。受験資格年齢もありませんし、僕も冗談半分で、“雄介も受けてみるか”と、提案したわけです」(同)
すると、目を輝かせた内山くんは「受ける」と即答。北村さんがフグを捌いている様子をスマートフォンで映像に収めては、自宅で何度も反復練習。徐々にその包丁さばきを上達させていったという。