■「捌いた魚は200種類以上」将来の夢は「さかなクン」

 持ち前の好奇心を武器に着々とフグ捌きの腕前を上げる内山くん。それでも前出の北村さんは当初、内山くんの合格に懐疑的だったと話す。

「フグを下ろすにはフグの頭を割ったり、皮を剥いだりと、力も必要。魚を三枚おろしにするのとはわけが違う。コツをつかめばフグも下ろせるようになるのですが、コツってセンスだから教えてわかるものでもない。試験までの3か月間で徐々に上手になっていった印象です」(北村さん)

 内山くんが三重県内のフグ処理試験に史上最年少で合格できた理由を北村さんが推察する。

「大人でも落ちる奴はおりますよ。近所の魚屋でも2回落ちたもんを知っとります。雄介はとにかく、魚が好きなもんで今まで、僕らから魚を貰ったりしては200種類以上を捌いている。好きだからこそ技術を吸収するのも早いんでしょうね」(前同)

 そんな内山くんには夢があるそうだ。

「試験の1か月ほど前に、近所のイオンにタレントのさかなクン(48)が来場した。そこでボラの話をしたそうです。尾鷲は水がきれいだから、地元の人の間ではボラは美味しくって有名です。だけど、水質が悪いところでもボラは釣れるとあって、市場で相手にされる魚じゃない。釣れても捨てる人もおるような雑魚です。

 そんな魚をさかなクンが“尾鷲のボラは美味しいよ”とイベントで喧伝しているのを見て感動。お母さんによれば、自分もいつかは“尾鷲の魚を広めたい”と、涙ながらに語っていたようです」(同)

 海の男に囲まれてスクスク育つ内山くん。いつかは自身がこの街の漁業を盛り立てるとの思いを胸に、今日もひたむきに魚と向き合う――。