止まらない物価高。一方で給料の上昇が追いつかず、生活はどんどん苦しくなる、という嘆き声が上がる昨今。そんな日本に見切りをつけた若者の間では、現地での滞在費を稼ぐための就業が許可されるワーキングホリデー(通称・ワーホリ)が「稼げる」と注目されている。1か月で50万円を超える金額を稼ぐ猛者もいると聞けば、行ってみたくもなるものだが――。

 日本でワーホリ制度が始まったのは1980年。オーストラリアとの間で制度の運用が始まると次々に協定国を増やし、現在29の国と地域の間で導入されている。ほとんどの国が18歳~30歳の若者を受け入れ対象としている。滞在期間は1年間としている国がほとんどだという。

 ワーホリ制度開始直後のバブル期には、ワーホリブームもあった。しかし、その後とんと話題にあがることがなくなっていたワーホリ。それがなぜ今、再度注目を集めるのか。淑徳大学・経営学部学部長で、観光ジャーナリストの千葉千枝子教授に背景を聞いた。

「平成不況の影響で内向き志向が増え、ワーホリは停滞していました。しかし、近年ワーホリ人気復活の理由は、30年という長きに渡る日本経済停滞に対し、若い人たちが国外へと可能性を求め始めたからだと考えています。

 バブル崩壊からつい10年ほど前までは、あくまでも“経験”のためにと海外へ行かれる方が主流でした。今も語学や海外で生活する経験を目標にする人が多いのは変わりませんが、時給の良さも視野にいれる人たちが出てきているのは事実です」(千葉教授)

 そんな中、若者の間でワーホリ渡航先として高い注目を集めているのがオーストラリアだ。日本ワーキングホリデー協会によると制度を利用して世界に滞在する日本人はおよそ2万人。その内、半数近くにあたる9000人ほどが現在、オーストラリアに滞在しているという。