■足かけ2年、社内の空気が変わったきっかけは
見た目にも華やかな商品が並ぶお菓子業界。そこと豆腐業界のギャップに困惑していた前出の池田氏だが、“目からウロコ”の経験をしたのは、18年4月の入社から3か月目、偶然誘われて出かけたアメリカ視察でのことだったという。アメリカのスーパーでは、豆腐が肉や魚と同列の“たんぱく源”として並んでいることに新鮮さを感じた池田氏は、「これだ!」と思ったという。
「初めて、”豆腐かっこいいじゃん!”と(笑)。日本でも筋トレ人気などの影響でたんぱく質ブームがあるし、“豆腐=地味な和食”から、“植物性のたんぱく源”という定義に変えれば、豆腐の新しい道が開けるんじゃないかと思ったんです。
そこでアメリカ人に豆腐をどうやって食べるのか聞いてみたら、焼いたり揚げたりするって言う。それなら柔らかい豆腐じゃなくて、固い豆腐がいいなと思って、帰国してから“とにかく硬い豆腐づくり”の試作を始めました」(池田氏)
今までにない豆腐を作ろうとする池田氏の姿勢に、当初、社内の空気は冷たかったそうだ。大きなきっかけとなったのは、大手コンビニエンスストア「セブン-イレブン」の意見だったという。
「社内では、最初”何やってんだアイツ”、みたいな(笑)。でも、お菓子業界にいたときも、商品開発に苦労は付き物でした。いつも問題解決をしながら一歩一歩チームで前に進んできたという思いがあるので、そんなに簡単に逃げる選択肢もないんです。
試行錯誤を続けてなんとかプロトタイプができたのが、19年の秋。それをセブン-イレブンさんに持っていったら、興味を示してくれたんです。セブン-イレブンの売れ筋商品に、手軽に食べられるたんぱく質商品として『サラダチキンバー』があるけど、植物性の手軽なたんぱく源商品はまだない。たんぱく源を売りにする豆腐商品を面白い、とセブン-イレブンさんが評価してくれたことで、社内の空気が一気に変わりました」(前同)