■「子どもたちが情熱を傾け、本気の挑戦ができるチャンスをつくることが未来につながる」

 同社は、雑誌だけではビジネスモデルが行き詰まってしまう可能性に備え、ネットメディア『コカネット』を12年に立ち上げている。20年には有料会員『コカネットプレミアム』もスタートし、今では1000人ほどの登録者がいるという。

「科学キットを使って実験や工作、プログラミングをするイベントや、雑誌や書籍を電子版で読めるデジタル図書館のサービスを提供しています。100周年の企画として、科学系YouTuberの市岡元気さんにアンバサダーに就任していただいて、動画展開も行なっています。

 こうしたコンテンツを知ってもらうためにはSNSの更新も欠かせません。5名の編集部員で雑誌、Web、物販などの事業を切り盛りしていて大変ですが、これからの時代の編集者には必要なことだと思っています」(前出の土舘編集長)

 100周年を迎えるにあたり、土舘編集長は雑誌を通じて世の中に変革を起こすべく、ある事業に挑戦しているという。

「100周年記念事業として“小中学生トコトンチャレンジ”という企画を行なっています。子どもたちから好きなこと、やってみたいことを募集。その中で選ばれたアイデアに10万円の研究資材費を提供して、専門家のサポートを受けながら1年間、研究を進めてもらいます。トコトンチャレンジを経験した子どもたちが将来、日本の研究開発を盛り上げてくれる日が来るのを期待しています」(前同)

 実際にトコトンチャレンジに応募し、最優秀賞に輝いた17件のチャレンジ内容を見てみると、“おいしいニンジンを育てる馬ふん肥料の開発”や“世界一おいしい水をつくる浄水器の開発”など大人顔負けの企画ばかり。

「彼ら、彼女らのチャレンジはすぐに望む結果が出なくてもいいと思っています。ただ、子どもたちが情熱を傾け、本気の挑戦ができるチャンスをつくることが未来につながると思うのです」(同)

 100年前、科学に興味がある子どもたちの知的好奇心を満たすために生まれた雑誌『子供の科学』。科学に興味を持つ子どもがいる限り、雑誌はこれからも愛され、進化し続けていくことだろう。

誠文堂新光社
1912年6月設立。本社は東京都文京区にある。茨城県出身の小川菊松が創業者。1920年に『商店界』、1924年に『子供の科学』『無線と実験』などを創刊。『子供の科学』は現在出版される科学雑誌としては最古の雑誌でもある。
公式HPhttps://www.seibundo-shinkosha.net/