■父・ジョエル・ロブションに「学んだこと」と「負けないこと」
父であるフレンチの“皇帝”、ジョエル氏に食の世界で真っ向勝負を挑もうというルイ氏。そんなルイ氏は、2012年に慶應義塾大学を卒業後、ワインと日本酒の輸出入を中心とした商社を、自身の手で創業している。
彼はその間、日本各地の酒蔵へと出向いたそうだ。それがきっかけで、さまざまな食材と出合ったという。その時の経験を生かす形で「日仏混合のショコラを自身の手で体現したい」と、ルイ氏は微笑みながらも父へのライバル心も覗かせる。
「私の母は日本人。私には、日本のアイデンティティが入っています。日本の食材の豊かさや文化の奥深さに対する理解は、父には負けません。父にはない、私だけの強みです」(ルイ氏)
ルイ氏の店を訪れると、前述の“フレンチのフルコースをイメージしたショコラ”との言葉通り、バラエティに富んだ商品の数々に目を奪われる。本わさびを使用したショコラ以外にも、鹿児島県の離島・喜界島の純黒糖を使用したショコラ、大分県豊後大野市にて栽培された大分有機かぼすを使用したショコラなど、日本とフランスの架け橋となるような品が並ぶ。
「最高の料理を作るには、最高の素材を使わなければいけません。とことん素材にはこだわるようにしています」(前同)
この教えは、父から学んだ教えだと明かす。
「父は、“食べ物を大切にするように”と常々話していました。愛情を持って食材、料理と接しろと。自分の家族や恋人が食べると思って、お客さんのために作るんだと繰り返し教えてくれました。気持ちを込める。それは私にも受け継がれています」(同)
父から子へと受け継がれた料理の哲学。その教訓は店舗で売られているショコラにも表れている。
『ラ・ガストロノミー』と名付けられた4つ入りで4000円(税込)のショコラは、父・ジョエル氏が来店客へと振舞ったフレンチのフルコースからインスパイアを受けて、ルイ氏が作ったショコラだ。決して安くはない。だが、トリュフとチーズの味と香りが湧き立つショコラ、フォアグラを感じるショコラ――まるでコース料理を食べているかのような感覚は、初めての体験となること必至だ。
「ジョエル・ロブションとは違う新しい世界観。フランスと日本の素材が共鳴し合う、新しいショコラを楽しみにしてください」(同)
今後はイートインスペースも拡充する予定だという。ペアリングとしてワインや日本酒などのお酒を楽しみながら、ショコラも楽しめるそうだ。皇帝の哲学は、ここ日本で引き継がれている。
ルイ・ロブション
父親はジョエル・ロブション、母親は博多出身の日本人で、フランスと日本の両国にルーツを持つ。慶應義塾大学を卒業後、2012年にワインと日本酒の輸出入を中心とした商社を創業、10年間代表取締役を務めた。2019年、フランスに本社を置くジョエル・ロブション・グループの共同代表に就任。世界各国でのロブションブランドの発展に注力している。2024年3月、初のショコラトリー『Eclat de Chocolat Louis Robuchon』を表参道にオープン。