■韓国ドラマの「ヒットの法則」寄せてきたか

 各局の連ドラに相次いで登場する記憶を失った登場人物たち。記憶がなくなるという設定がドラマ内で続出する事態に、X(旧ツイッター)上では《アニメは異世界転生もの ドラマは記憶喪失ものが流行っているのか》《今期ドラマなんでこんなに記憶喪失?異世界転生のニューバージョン?》など、アニメ界に多い「異世界転生」を想起する声が続出。

 また、記憶喪失といえば日本でも大ヒットした『冬のソナタ』(2002)をはじめ、『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』(2016)、『ショッピング王ルイ』(2016)、『100日の郎君様』(2018)など、韓国ドラマの“十八番”でもある。

 それだけに、《記憶なくすの韓国ドラマの得意どころ。コピーだなぁ~》《韓国ドラマの真似してる?》《邦ドラマが韓ドラに寄せてきてるとしか思えない…!》と、今期の連ドラが韓国ドラマの“ヒットの法則”を踏襲しているのではないかと見る向きも少なくない。

 日本ドラマ界における記憶喪失ブームとも受け取れるこの状況は、いったい何なのか。

 ドラマ評論家の吉田潮氏は、「日本でも沢村一樹(56)が主演を張った『刑事ゼロ』(テレビ朝日系/19年)や浜辺美波(23)が主演した『ドクター・ホワイト』(フジテレビ系/22年)などでも記憶喪失は設定として利用されています。ドラマとして“よくある手”ではある」と前置いたうえで、ドラマにおける“装置”としての記憶喪失の“手軽さ”を解説する。

「まず記憶喪失は、地上波ドラマの王道パターンであるサスペンス・ミステリー系でも、恋愛・ヒューマン系でも、どちらでも有効に成立します。

 サスペンスやミステリーにおいて記憶喪失という設定の登場人物が現れると、視聴者は“もしかしたらこの人が事件の鍵を握っているのかもしれない”、“この人の周囲にいる人は悪人かもしれない”などと考える。制作側にしてみれば、背景説明を、いったんすっ飛ばした状態でストーリーを進められるのです」(吉田氏)

 昨今、ドラマ業界は堺雅人(50)主演の『VIVANT』の大ヒットを受け、考察ブームの真っただ中。ドラマを見る視聴者を惹きつけたい制作陣にとっても、記憶喪失は都合が良い設定なのだそうだ。

「SNS上での考察ブームを狙う制作側にしてみれば、視聴者に“なぜこの登場人物は記憶喪失になったのか”“いつ記憶が戻るのか”など考えさせることで、後々まで視聴者を引っ張れる。ドラマ業界が考察ブームの中、記憶喪失はお手軽な装置となりえます」(前同)