■「渋谷駅周辺に人が集まる場所がない」コロナ禍以降に起きた変化

 そんな渋谷の新・宮下公園に、なぜ今、人々は集まるのか。サステナブル都市計画家で横浜国立大学客員教授の山崎氏は第一に、コロナ禍以降の人々のライフスタイルの変化で、“そもそも日中、渋谷に集まる人が増えている”ことを挙げる。

「オンライン授業やリモートワークが当たり前となり、学生も会社員も“場所”に100%束縛されなくなりました。つまり日中の時間、街中にいる人の絶対数がこれまでよりも多いんです。そのうえ、渋谷というのは原宿や表参道といったトレンドエリアから徒歩圏内だし、電車のアクセスも良い。そこにできた新しい商業施設の上にある公園となれば、行ってみたくもなるものです。

 さらに、ここのところ円安の追い風もあり、訪日外国人はどんどん増えています。すでに日本訪問は2度目、3度目という人も多く、そうした人たちは浅草寺や東京タワーのような“THE観光名所”はすでに行ったからと、今度は都市にあるスポットに興味をもつんですね。コロナ禍を経たライフスタイルと訪日外国人で、総じて日中の人口が多くなっているという状態が今の渋谷です」(山崎氏)

左手、円形ベンチの真ん中にいるハチ公はアーティスト鈴木康広氏による作品「渋谷の方位磁針|ハチの宇宙」 撮影/編集部

 渋谷のハチ公像やスクランブル交差点はすっかり観光地化しているが、山崎氏は「渋谷駅周辺に座ってくつろぐ場所がない」ことを指摘する。

「カフェはあっても席数が限られます。しかもカフェで仕事をする人が増え、くつろぎ目的の人はあぶれてしまう。その点、新しい公園は広い無料のオープンスペースで、しかも渋谷のど真ん中で公園内の人通りもある。ただ座っているだけでも全然飽きません。

 さらに小腹が空いたら、近くの飲食店やコンビニで何か買ってくることだってできます。“何もしないでダラダラできる”というのはすごくありがたい空間で、居心地の良さにつながります」(前同)