■120キロで後続車両が追い抜いて……「深夜の恐怖体験」

 前出の村松氏が愛知県内で自身が直面した「名古屋走り、深夜の恐怖体験」を振り返る。

「前提として深夜は車の数が少ないのでスピードを出す車は増えるのですが、名岐バイパスは尋常じゃない。120キロは出ているかというようなスピードで後続車両が追い抜いて行ったかと思えば、黄色信号や赤信号で自分が止まっている横を平然と通り過ぎて行くような信号無視車両も珍しくない。間近で直面すると、事故の恐怖を感じますよ。

 結局、危険運転が起こるのは、“その道路が走りやすいかどうか”。交通量が多い東京のような大都会ではなかなか自由に走れないけど、地方都市である名古屋は郊外に向かって道も広くなるし、交通量も減っていく。昼夜問わずスピードを出しやすい道路があるため、運転が乱暴になりやすいのでしょう」(村松氏)

 ウインカーを出さずに車線変更を繰り返しがちな危険運転が常態化している地域は、中京エリアに限らない。きびだんごで知られる岡山県も中国地方の危険運転地域として知られるという。

「“岡山ルール”と呼ばれるノーウインカー走行が県内では常態化。これは赤信号の際、交差点前で停止していた車が青信号に変わった瞬間に猛スピードで発進し、対向直進車よりも先に右折する行為のことを指します。目と鼻の先で対向車線の車が右折していく。運転している身としては事故が起きないかと冷や冷やものです」(前同)

 岡山県の“岡山ルール”に匹敵する危険運転が頻発するのは、四国地方最大の都市・愛媛県松山市だという。

「松山市は、安土桃山時代の末期に建てられた松山城を中心に発展した城下町。その影響からか、道が狭く一車線しかない道路も。そうすると赤信号に一度捕まると、なかなか車が走り出せない。この特有の街作りの影響で、1回右折や左折をする場所を間違えると、予定のルートに戻るのは難しい。そのため、岡山ルール同様、交差点の信号が赤から青へと変わった瞬間に右折をする車が絶えません。“伊予の早曲がり”と呼ばれ、県外のドライバーからは恐れられています」(同) 

 命を失うこともある自動車事故。運転はマナーを守って、安全に。

村松虎太郎
全国47都道府県の主要幹線道路を自身の車で運転する交通ジャーナリスト。雑誌メディアを中心に全国の交通事情に関して解説をしている。