■元民放Pが分析する民放キー局で“大人も見る”アニメが放送されるワケ

 TBS系で放送された『呪術廻戦』は、迫り来る呪霊を呪術を使って祓う呪術師の闘いを描いたダークファンタジー作品。第1期(20年10月期)は深夜枠(土曜1時25分~)ながらSNSで大バズりし、『劇場版 呪術廻戦0』(22年11月公開)は興行収入138億円の大ヒットを収めている。

 日テレ系で放送された『葬送のフリーレン』は、勇者パーティの仲間で長命のエルフ・フリーレンが人間を学ぶために旅に出るファンタジー作品。『金曜ロードショー』で放送した翌週から日テレの新アニメ枠『FRIDAY ANIME NIGHT』枠(金曜夜11時~)の第1弾としてスタート。23年10月から今年3月まで2クール放送されていた。なお、現在の同枠では『転生したらスライムだった件』が放送中だ。

※画像はアニメ版『呪術廻戦』の公式X『@animejujutsu』より

「以前は、テレビアニメといえば子どもが見るものだと思われていましたが、現在は全く違いますよね。『鬼滅』、『呪術』、『フリーレン』が良い例ですが、原作は少年誌に掲載されていても、普通に大人が見ているし、そういった層に向けてのキャラグッズも充実しています。キー局が、大人も楽しめるアニメを率先して流している感じですよね」(前出の制作会社関係者)

 近年、なぜ民放キー局で“大人の視聴者も狙ったアニメ”が放送されるのか――テレビ朝日で情報・報道番組のプロデューサーを長年務めた鎮目博道氏に、テレビ局の“事情”を聞いた。

「まずアニメはそもそも、テレビ局にとって非常に効率の良いビジネスなんです。というのも、自局で制作するバラエティ番組やドラマと違い、アニメは制作をするのも、国に支払う電波料を負担するのも、すべて制作会社サイド。テレビ局サイドの負担が極めて少ないんです」(鎮目氏=以下同)

 またアニメの場合は、製作委員会方式(※複数の企業で出資し合い事業リスクを分散するビジネスモデル)で制作され、テレビ局の放送枠を買い取る仕組みとなっている。さらに、

「たとえばバラエティ番組を作るとなったら、制作するのに加え、局の営業がスポンサーを探すために広告代理店や企業を回る必要がありますよね。しかし、製作委員会方式で作られたアニメは、最初からスポンサー企業が製作委員会に参加しているから、放送するテレビ局サイドが営業をする必要もなく、その面でも効率が良いんです」