■コンプライアンスの面でも自由度

 加えて、近年急速に厳しくなりつつあるコンプライアンスの面も、アニメにはプラス点があるようだ。

「実写ドラマなど比べると、かなり表現の自由度が高いんです。それこそ『鬼滅』では首が飛んだり、腕を切り落とされて血まみれになったりするシーンが多くありますが、こういうシーンは実写ドラマでは難しいですよね。そういったシーンも、“アニメ”ということで許されるということです」

 そして、近年、民放キー局で“大人も見る”アニメが放送される理由の極めつきが「爆発的な収益化の可能性があること」だという。

「アニメが大ヒットすればCMスポンサーからお金が入るだけではなく、劇場版につなげることもできる。そして、映画になるまでのヒット作になっていたら、さまざまなグッズ展開も期待できる。そして、イベントにも期待ができますね」

 フジテレビは夏のイベント「お台場冒険王」を開催しているが、そこで人気アニメのブースを展開すればイベント全体の集客増が期待できるし、そこでのキャラクターグッズの売り上げも期待できるだろう。

※画像は『鬼滅の刃』の公式X『@kimetsu_off』より

「ちなみに、現在フジテレビで放送されている『鬼滅の刃』は当初、TOKYO MXで放送されていました。同放送局では、アニメ作品の第1期がスタートすることが多いのですが、これは電波料が安いうえ、他のローカル局と違って“首都圏で放送している実績が作れる”というのが大きな理由の1つだと言われています。

 近年は、Netflixなどでの配信も増えていますが、アニメ業界の方たちは地上波放送に重きを置いているというのと、TOKYO MXは基本的に放送内容に意見をしてこない、自由にできることも、同局が人気の理由だとといいますね」

 2000年代に本数が激減し、このまま衰退していく雰囲気さえあったテレビアニメ。時代は大きく変わった。

鎮目博道
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)