■陸・空・海、入隊希望者が一番少ないのは海上自衛隊

 一般企業同様、若手志願者の減少に悩む海上自衛隊。海上幕僚監部広報室の吉田三佐は、その原因に海上自衛隊の労働環境の特殊さを挙げる。

「少子化でそもそもの募集対象者(18歳から33歳未満)の母数が減っているうえに、陸・空・海がある自衛隊のなかでも海上自衛隊は特に希望者が少ないんです。

 忌避される理由として私が聞いている限りでは、“ネットが使えない”という要素は大きいと。入隊するときに尻込みしてしまう人は少なくないようです。

 たとえば、陸上自衛隊は陸の上で任務をこなし生活もするのでインターネットは使えます。航空自衛隊については、そもそも飛行機を操縦している間は携帯を使うこともなく、一度陸に降りれば、通常通りインターネットを利用できます。一方、海上自衛隊は長期間の洋上勤務もありますので、電波が届かない場所で活動することも珍しくありません」(吉田三佐)

 海上自衛隊では定員割れが続き、人材確保が喫緊の課題となっていたところへ、スターリンクが海上利用のインターネットサービスの提供を開始。これを受け、導入の検討を始めたという。5月、『かしま』と『しまかぜ』にそれぞれ2基のインターネット受信用のアンテナを取り付けたそうだ。これにより、休憩時間に各自のスマートフォンやタブレット端末などでインターネット利用が可能になる。

「これまでも艦内でインターネット利用ができていなかったわけではありません。ただ従来の衛星通信技術では速度が遅い、データの送受信がしにくいなど通信環境に難が大きく、インターネットを通じた連絡は家族や知人など、事前登録した限定的な相手に1日メール2通のみに制限していました。

 以前からインターネット利用を渇望する声は隊員からありましたが、それを叶えるサービスがなく、困難だったのが現実です」(前同)