■民放連会長になると……

 80年代、90年代と違って、子どもにとっての娯楽と言えばテレビではなくなった昨今。今やテレビは見ないという子どもも多くなってきている。そんななか、『青少年に見てもらいたい番組』を発表してまで、子どもたちへとアピールをする民放連は、いったいどういう団体なのか。

「民放としての公共アピール、簡単にいえば“建前を言う係”です。会長は基本的に持ち回りで、在京テレビ局の最高幹部までいった人。現在は作家・遠藤周作さんの長男で、元フジテレビ社長の遠藤龍之介さんです。

 業界の建前を代表しなきゃいけないので、会長になった人は、もともといた局を少しシャキッとさせなきゃいけないような雰囲気が漂います。歴代を振り返ると、民放連の会長になったとたんに、その会長の古巣である局で俗悪系の番組が終わることがあり、局内では“会長の建前のために終わるのでは”なんていう噂がまことしやかに流れがちです」(前出の鎮目氏)

 視聴者の声に耳を傾けることは大事だろうが、「怒られないこと」を意識し続けた結果、「問題はないけど誰も面白いと思わない番組が増えちゃった」と鎮目氏は指摘する。

『青少年に見てもらいたい番組』の選定が始まった25年前には考えられないほど、生活のなかでテレビの立ち位置が変わった今、そろそろ、その意義を考え直してもよさそうだ。

鎮目博道
テレビプロデューサー。92年テレビ朝日入社。社会部記者、スーパーJチャンネル、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。ABEMAのサービス立ち上げに参画。「AbemaPrime」初代プロデューサー。2019年独立。テレビ・動画制作、メディア評論など多方面で活動。著書に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)